次世代エンターテインメントカンファレンス 『LECT2015』 レポート
2015-11-19

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2015年11月18日、音・映像・放送の祭典 Inter BEEの会場内にて、次世代のエンターテインメントの在り方を考えるカンファレンス「LECT2015」が開催されました。

映像・音響・照明・パフォーマンスを融合した「ライブエンターテインメント」や、VR・AR・インタラクティブなど新しい体験を提供する「コンテンツテクノロジー」をメディア産業の未来を担う重要なカテゴリーとして捉え、それら《テクノロジーを得たクリエイティブパワー》を、プレゼンテーションと展示で次世代そして未来へ発信します。
InterBEE LECT2015より

 
様々なテーマのプレゼンテーション/パネルディスカッションが行われた中で、注目のトピックをピックアップしてレポートします。

 
 

先進テクノロジーとアートの融合が生み出す、
ライブエンターテインメントの可能性

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主催者企画ステージとして、PerfumeやELEVENPLAYでの革新的な演出を担っているRhizomatiks Research 真鍋大度 氏、石橋 素 氏が登壇。VR×ドローンの事例や開発背景をプレゼンテーションしました。

Rhizomatiks Researchの開発フローは
  Planning → R&D → Demo/Prototype → presentation
で行われており、Demo/PrototypeまではRhizomatiks Researchのみで行える環境ができているとのこと。(ただし昨今は外部からResearchフェローも入れて行うこともあるそう)

新しい表現方法の可能性としてドローンを積極的に行っており、そのDemoやテスト風景を見ながら、開発背景を説明。Rhizomatiks ResearchのDemoやテスト風景はYoutubeでも公開されていますが、映像が流れるたびに聴講者から感嘆の声が漏れていました。

・リアルタイムの映像にARを合成、リアルカメラとバーチャルカメラのトランジションテスト

・モーションキャプチャカメラとマーカーを利用し、撮影対象の座標を取得するテスト

・リアルタイム+事前に取得したスキャンデータの合成

・Nosaj Thing – Cold Stares ft. Chance The Rapper + The O’My’s

ドローンの飛行パスは

  • 調整/修正が発生する場合には「Max」
  • ほぼ確定し修正があまり発生せず、精密な動きが求められる場合には「Maya」

でプログラミングしているとのことです。
ドローンは空中に物体を飛ばしているため、場合によっては事故につながりかねないため、様々な制約の中で表現をテスト/模索していることを解説してくれました。

そのほか、VR+ドローンの他にも、Machine Learningの重要性の重要性についても語っていただけました。現在は、人工知能で生成した画像などを素材に利用することもあり、またマシンスペックが今後向上していけば、リアルタイムで人工知能に処理させることも出てくるだろうとのことです。
 

プレゼンテーションを通じて感じたことは、失敗できないエンターテインメント演出に向かう姿勢として、

  • リスクを考慮し、最適な技術を都度組み合わせ、時には作り出すこと
  • 十全なテスト、Demoを行うこと
  • チームとしての、スペシャリストによる分業

の重要性でした。
BAKERYとしても今後プロダクトなどを開発していく上では、それらを意識しクオリティの高いものを提供していかねばと痛感しています。

 
 

操作される映像の過去と人との関係

曽根光揮氏(TNYU inc.)がプレゼンテーションしたのは、自身の「Between TV and me」。
映像の人物と鑑賞者に新しい関係性を模索するこの作品は、映像を見ている観客の姿が映像の中に映り込むというもの。

客観的に見ている映像の中に自身が映り込むことで、自身もその世界に組み込まれている感覚を味わうことができます。

短編映像(過去、編集+加工、フィクション)とライブ映像(現在、リアルタイム、現実感)を掛け合わせることで、映像の人物と鑑賞者に新しい関係性を作り出しています。

この「Between TV and me」を実際に体験することができましたが、実に不思議な感覚に囚われます。
それまで客観的に、別の世界のものとして捉えていた映像。
そこに自身が写り込んだ瞬間、その映像がもう一つの現実のように感じます。
 
新しいコンテンツ/体験の提供を考えていく上で、一つの重要な観点が「観客を没入させ、表現に取り込む」ことだと思われます。
手法として、観客のモーションに反応させるインタラクション性というものもありますが、この「Between TV and me」はさらに新たな手法/可能性を示しているのではないでしょうか

 
 

網膜走査型レーザアイウェアRETISSA

株式会社QDレーザがプレゼンしたのは、網膜に直接画像を描き込むウェアラブルデバイス“RETISSA”。
これまでの視覚デバイスは、ディスプレイや投影面を“視る”ことで知覚していたのに対して、この「RETISSA」は、フレームの内側に内蔵した超小型プロジェクタからの微弱なレーザ光を直接網膜に当て、像を写し込んでいます。

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この方式をとることにより、装着者の視力やピントの位置に依存せずに画像を見せることができ、真のユニバーサルなスマートグラスを目指しているとのことです。

VR/ARが普及していく上では、コンテンツだけでなくそれを届けるためのデバイス側の進化が必要になります。
現在のVR/ARグラスでは、視野角や画質の他にも

  • メガネをしている人は二重掛けする必要が有る
  • サイズが大きく、デザインや重量的に日常使いするには難しい

などの課題があります。この“RETISSA”はそれらを解決しうる一つのアプローチだと思われます。コンテンツを模索するだけでなく、こういったデバイスの進化もしっかりとウォッチしていきたいですね。

 
 

VR/ARが切り拓く、疑似体験型コンテンツの未来

モデレーターに株式会社HEART CATCH 西村 真里子 氏、パネリストとして

  • 株式会社カヤック 泉 聡一 氏
  • 株式会社ヘキサメディア 野口 克也 氏
  • アーティスト、インタラクションデザイナー 市原 えつこ 氏

を迎えてのパネルディスカッションのテーマは「VR/ARが切り拓く、疑似体験型コンテンツの未来」。
 
カヤック社の「VR面接」や 野口 克也 氏の撮影した美麗な「ドローン空撮映像」、市原 えつこ 氏の「セクハラインタフェース」「SRxSI」などさまざまなプロダクトが紹介されるとともに、今後のコンテンツの一つのキーワードとなるであろう“擬似体験型コンテンツ”について、さまざまな議論が行われました。

・VR面接

・ドローン空撮映像

・セクハラインタフェース

 
・SRxSI

 
 
議題としては以下のとおり。

  • 新しい映像手法、映像体験は人間のどの機能を拡張するか
  • 人工知能が映像を生成する時代、クリエイターは何を気にするべきか?
  • 2020のコンテンツ:テクノロジーの融合によるコンテンツの可能性は?

 
 

さまざまなバックグラウンドを持つパネリストの方々の発想/発言にはとても示唆が多く含まれており、LECT2015で最も盛り上がった回だったかもしれません。

その中でも特に取り上げたいトピックとしては、以下に集約されていると思います。
 「“それ”を映像と認識されているのであれば、没入感・実在感が負けているという状態。それがさらに進んだとき、コンテンツを体験するときに「傍観する」のではなく「実在している」というのが次のステップ
 
 「いい線を弾ける・いい音が弾ける などは人工知能の仕事に置き換わっていく。人間の仕事としてはストーリーや全体の判断・プロデュースが重要になっていく。

 「見る・聞くという動詞が今後はすべて“体験する”に変わるのではないか
 
一方向的に伝えるだけでなく、観客を惹き込み“体験させる”ためにどんな形が考えられるか、発想の一つの軸になるのではないでしょうか。

 
 
新世代エンターテインメントを模索し発信するこの『LEC2015』。
全体を通しては、やはりVRドローンが大きな割合を占めていました。
新しい表現方法を生み出すためのTipsや、いかに“体験を生み出すか”について発信されたことは、とても大きな意味があるのでは、と感じるカンファレンスだと感じています。


“現実と非現実の区別”ではなく“現実と非現実の融合”へ。
“魅せる・聴かせる”から“体験させる”へ。
“傍観”から“没入”へ。

今年の内容を受け、来年度はどのような内容に変化していくかも注目したいですね。
 
 
 
なお、Inter BEEについては11/19・11/20も開催されており、無料で最先端の音響/映像/放送について触れることができます。そちらにも是非足を運んでみてはいかがでしょうか。

・過去最多のブースが出展されている Inter BEE
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・ラインアレイスピーカーのデモも開催されています
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ソース:

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 


2015-11-19 | Posted in イベント/LIVE, エンターテック | by Yuki Abe

Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。