Techstars Musicが2020年プログラムに新規参画する音楽スタートアップ10社を発表
カテゴリ:エンターテック
2020-02-24

音楽ストリーミング・サービスの利用拡大を中心とした今後の世界的な音楽市場の飛躍的成長予測を背景に、2017年にスタートした音楽特化型のアクセラレータープログラム「Techstars Music」。その2020年プログラムに参加する音楽テックスタートアップ10社が発表された。

数百の候補企業から選出されたは、音楽ビジネスの向かう先として注目される10社。要チェックだ。

「TECHSTARS MUSIC ACCELERATOR ANNOUNCES NEW 2020 CLASS OF MUSIC TECH STARTUPS」
https://www.techstars.com/content/accelerators/techstars-music-accelerator-announces-new-2020-class-music-tech-startups/

 

新規に参画したスタートアップ10社をチェック

早速、Techstars Musicに2020年新規参画することとなった、音楽・エンターテインメントスタートアップ10社をチェックしていこう。

 

“ポケットサイズのレコーディングスタジオ”「AUDIGO LABS」

AUDIGO LABS(San Francisco, CA)
https://www.audigolabs.com

「Audigo Labs」は、プロ品質の“ポケットサイズのレコーディングスタジオ”を提供することを目指す音楽スタートアップ。ミュージシャン、ポッドキャスター、コンテンツ作成者をターゲットに、プロ品質のオーディオを簡単にキャプチャ、編集、共有できるようにするという。

まだ公式サイト、Twitter、Instagramでも詳細な情報は公開されておらず、具体的にそれがアプリなのかハードウェアなのかは不明。

 

Deepfakeのリスクを監視する「DELTA AI」

DELTA AI(Brisbane, Australia)
https://www.deltalabs.ai

昨今、Deep Learningの領域で最も懸念されている問題の一つである「Deepfake」。映像に映る登場人物の顔を別人の顔で書き換えるその技術は日々進歩しており、より簡単に、より高精細な映像を生成できるようになってきている。新しいコンテンツ制作の可能性を秘めている一方で、有名人やコンテンツホルダーの名誉を毀損する映像が公開されている現実がある。

スタートアップ「Delta」は、この Deepfake で生成された映像の検出・トレースができる機能を提供することで、エンターテインメント企業のデジタル権利とブランドアイデンティティを保護することを目指している。

 

新しい音楽開発環境を提供する「ELASTIC AUDIO」

ELASTIC AUDIO(Atlanta, GA)
https://www.elasticaudio.com

サードパーティのサンプル/エフェクトマーケットプレイスと連携する軽量の開発ツールを提供し、デジタルクリエイティブとゲーム開発者向けの“最新オーディオを民主化”を目指しているのが「Elastic Audio」だ。

まだ詳細な情報は明かされていないが、公式サイトでは「Sound Shaders」というプログラミング環境の提供が予告されている。TyldalCyclesのようなライブコーディング環境になるのか、どのような応用性があるのかチェックしていきたい。

 

音楽・エンターテインメントのデータ分析を変える「ENTERTAINMENT INTELLIGENCE」

ENTERTAINMENT INTELLIGENCE(London, UK)
https://entertainment-intelligence.com

「Entertainment Intelligence」は、音楽ビジネスに新しいデータ分析を提供しようとしているスタートアップ。リスナーの傾向を深く掘り下げた正確で使いやすい実用的なデータを、業界ベンチマーク、レポート、およびダッシュボードとして提供するという。

SpotifyやApple Music、Google、Deezer、Pandoraといった主要音楽ストリーミングサービスにダイレクトにアクセスできること、ソーシャルデータとシームレスにデータを繋げ、日常的に情報を追跡・分析できることなどを他サービスとの差別化要因として挙げている。

 

ブロックチェーン対応のインタラクティブデジタルグッズ「FANAPLY」

FANAPLY(New York, NY)
https://fanaply.com

音楽、スポーツ、エンターテイメント業界向けのブロックチェーン対応のインタラクティブなデジタルグッズを作成できるのが「Fanaply」。デジタルグッズの作成・カスタマイズから、販売するマーケットプレイス環境までを提供するようだ。

Fanalpyアセットエコシステムは、スポーツチームやアーティスト、フェスティバル、ブランドとコアファンを、グッズを通じて結び付け、新しいレベルのエンゲージメントを生むという。公式サイト上の事例ではdoorsが紹介されている。

日本でもブロックチェーンを活用したグッズやサービスがいくつか試行的にも登場してきているが、どのような違いを出してくるか、注目したい。

 

チケット売上UPを目指し、機械学習を活用したファンデータ分析プラットフォームを提供する「FANSIFTER」

FANSIFTER(Talin, Estonia)
https://fansifter.com

エストニアからプログラムに参加するのは「FanSifter」だ。彼らは音楽、エンターテイメント、スポーツイベントがより多くのチケットを販売できるようにする、機械学習を活用したファンデータ分析プラットフォームを提供する。

プラットフォームは分析・セグメンテーションの機能を有し、適切なオーディエンスに対してコミュニケーションが取れるようになるという。現在はβ版を限定公開している。

 

ライブイベント中のオーディエンスとの対話を実現する「SPLASHMOB」

SPLASHMOB(Los Angeles, CA)
http://www.splashmob.app

情報がほとんど無いものの、どのようなものになるのか楽しみなのが「Splashmob」。会場、アーティスト、チーム、パフォーマーが、ライブイベント中にリアルタイムで大規模のオーディエンスと対話し、エンゲージできるツールを構築しているとのこと。

 

Flying Lotusらのコンサート映像などを制作する「STRANGELOOP STUDIOS」

STRANGELOOP(Los Angeles, CA)
https://strangeloop-studios.com

いわゆる「音楽スタートアップ」が並ぶ、今回のプログラム参加リストの中で意外だったのが「STRANGELOOP STUDIOS」だ。彼らは、Flying Lotus や Erykah Badu、The weekend など有名アーティストのコンサート演出や映像制作を行うオーディオビジュアルスタジオだ。

STRANGELOOP STUDIOS REEL 2019 from Strangeloop Studios on Vimeo.

その他、バーチャルアーティストも手がけているというこのスタジオが、Techstars Music のアクセラレーションプログラムを受けてどのような展開を見せるか、実に楽しみだ。

 

VRでDJを育てる「TRIBE XR」

TRIBE XR(San Francisco, CA)
https://www.tribexr.com

VRを「技術者の訓練」に活用するのは既に行われていることだが(例えば自動車整備工の整備トレーニングなど)、それをクリエイティブ業界に持ち込もうとしているのが「TRIBE XR」。そして彼らの最初のプロダクトが「Tribe XR DJ School」、“DJを育成するVR” だ。

DJに求められる機材が無くてもDJのトレーニングができるツールとして、既に世界中で数千人が活用しているという。

 

“没入型アート作品”をポップアップで展開する「ULO」

ULO(Los Angeles, CA)
https://www.ulo.world

「ULO」(Unidentified Landed Object)は、作品のスペースに入り込む “没入型アート作品” を展開するキュレータースタートアップといえる。

交通量の多い通りに突然現れる「異世界へのポータル」、そんな風に感じさせる ULO の展示はポップアップショップのように街中に展開され、15分程度のコンパクトな作品を$10-15で体験できる。

アーティストとコラボレーションしながら、非日常のアート空間を身近に生み出す「ULO」。こうした体験の場を新たに創出する取り組みにも注目していきたい。

 

2020年の音楽テックトレンドを垣間見る

幅広い内容となった2020年の参画企業たち。まだ詳細が明らかになっていないスタートアップも多いが、2020年の音楽テックトレンドを垣間見ることのできるリストになっているのではないだろうか。

「ビジネスデータの分析」はより「ファンとの適切なコミュニケーション」「高いエンゲージメントの確立」といった次のアクションへ繋げられるかどうかが次の価値となっているように感じる。また、ライブ・コンサートや没入型アートなどの「体験する価値をいかに増幅するか」も2020年は引き続き注目したいカテゴリだ。また、Deepfakeのような新しい脅威に対して早く対策方法を提供できるかも価値に繋がる。

新しいディケードの始まりとなる2020年、日本そして海外からどのような新しいスタートアップが出てくるか。また生み出す主体として新たな打ち手が見つけられるか、筆者としてもアンテナを張っていきたい。


2020-02-24 | Posted in エンターテック | by Yuki Abe
Yuki Abe

Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。