新しい音楽×VR体験の裏側『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018–“光”&“誓い”–VR』開発トークイベント レポート
カテゴリ:VR/AR, イベント/LIVE
2019-01-23

2019年1月18日(金)、宇多田ヒカルの注目の音楽VRコンテンツ『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018–“光”&“誓い”–VR』がPlayStation Store で一般配信を開始した。


『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 – “光” & “誓い” – VR』 ロンチトレーラー | PlayStation®VR

ライブの風景を3パターンのアングルから3D映像も鑑賞することができ、会場全体の演出を見ることや、宇多田ヒカルが歌う姿を、本人が目の前にいるような感覚で楽しむことができる。

先んじてこのコンテンツを体験することができたが、これまでの音楽VRコンテンツの中でもクオリティが抜群に高く、宇多田ヒカルというアーティストの存在感、視線をリアルに感じられ、また新しい“音楽体験”であると感じることができた。

このコンテンツリリースを記念して、同日に、渋谷モディ 1 階にあるソニーの情報発信拠点「ソニースクエア渋谷プロジェクト」にて、コンテンツの制作陣によるトークイベントが開催された。

今まで宇多田ヒカルの数々のミュージックビデオおよび今回のVRコンテンツを含むLIVE映像作品を多数手掛けてきた映像ディレクターの 竹石 渉 氏、本コンテンツのプロデュースを務めたソニー・インタラクティブエンタテインメントの 多田 浩二 氏、技術面をサポートしてきたソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社の 林 亮輔 氏、宇多田ヒカルのマーケティング担当として株式会社ソニー・ミュージックレーベル 梶 望 氏。

VRコンテンツ制作を支えた4名が登壇し、今回のVRコンテンツの制作秘話や、これからの音楽とVRの可能性などについて語られた、貴重なイベントをレポートする。

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<登壇者>
 竹石 渉 氏 /『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018–“光”&“誓い”–VR』映像ディレクター
 梶 望 氏 / 株式会社ソニー・ミュージックレーベルズ
 多田 浩二 氏 / 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
 林 亮輔 氏 / ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社

 

ソニーの最新テクノロジー×コンテンツ×クリエイターが集結、一丸となったプロジェクト

トークイベントの最初のトピックは「今回のVRプロジェクトのきっかけ」について。今回のVRコンテンツがどのようにスタートしたのか、そこにはソニーグループ全体で新しいヒット、そして体験を生み出そうとする想いがあった。

◆ きっかけは「ソニーならではのヒットを作る」こと

宇多田ヒカルのマーケティングをデビュー前から担当し、2017年に共にソニー・ミュージックに移籍した梶氏。移籍して何を考えたかというと「ソニーならではのヒットを作る」ということだという。梶氏はこう語る。

「ソニーの中では『“One Sony”で売る』というカルチャーがあって、ソニーグループ全体でとにかくいろいろなことができちゃうんですよね。「それまでできなかったことが、ここだったらできる」ということが沢山あって。『そうか、じゃあ “One Sony” で宇多田ヒカルを売っていくというプロジェクトを作っていこう』と。いろいろな人に会って、話を聞いて、いろいろな施策を実施しました。例えばソニーのヘッドフォンのCMタイアップがあります。」

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そしてこの 「ソニーならではのヒットを作る」という想いが、今回のVRプロジェクトへと繋がっていく。

去年の時点で『KINGDOM HEARTS』の発売日が見えたということで、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)さんにお邪魔して『何か一緒にできないですか』とお話したら、『せっかくなので、いろんなことをやっていきましょう』という話になりました。

 宇多田ヒカルは去年の12月9日でデビュー20周年を迎えまして、久々の全国ツアーもあった。ですから、それと掛け合わせて『KINGDOM HEARTS』の要素も入れられるようなコンテンツ開発を考えた結果、このVRプロジェクトがスタートしました。」

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この梶氏からの話を受けて、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの多田氏はこのように語る。

久々に宇多田ヒカルさんがライブツアーをやるということで、それと一緒に何かできないか、というお話をいただきまして。これは何かやりたい、と手を挙げたんですが、どうやって実現するかという壁にぶつかりました。そこでソニー・ミュージックを中心に、ソニーグループ各社の知見や技術を合わせて新しいVRの“体験”を作ろうという『PROJECT LINDBERGH(プロジェクト リンドバーグ)』というプロジェクトにお声がけさせていただきました。」

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こうして、ソニーグループ全体のプロジェクト『PROJECT LINDBERGH(プロジェクト リンドバーグ)』のパワーによって、新しい体験が作られてく。そのパワーはこの後のトークでも十二分に感じられることとなった。

 

◆ これまでのLIVEミュージックビデオとの違い

続いてトークはこれまでのLIVEミュージックビデオと今回のVRコンテンツの違いについて。竹石氏はこれまで宇多田ヒカルのミュージックビデオやLIVEビデオといった映像作品を監督してきた。そんな竹石氏は、これまでのLIVEミュージックビデオと今回のVRコンテンツの違いを、このように語った。

今までミュージックビデオを作るときには、アーティストや曲のメッセージといったものを、クリエイティブの表現で楽しんでもらうという作り方をするんです。けれども、今回すごく難しかったのが『ツアーのシーンをそのまま、無垢なまま、VRで表現しなければならない』というのが一番難しくて。僕はいつも映像を作っていますけれど、今回のVRでも“撮影”という映像の手法はとっていますけど、実はこれは「映像じゃないな」、「体験を創るという難しさがある」と思いながら作っていました。」

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今回のVRコンテンツの監督は、他の方の選択肢もなく竹石氏へオファーされたという。その意図を梶氏は以下のように語った。

竹石さんとのお付き合いはとても長く、安心できる監督であるということが理由のひとつ。そしてもうひとつ、竹石監督はVRの技術にも精通しているという点。監督はUSJのエヴァンゲリオンアトラクションのコンテンツの開発も手がけられていて。なので、アーティストサイドにもちゃんと言えるし、技術サイドにもちゃんと言える。そんな監督はなかなかいないですよね。」

 

アーティストを理解しその魅力を伝えてきた上に、VRの技術についても理解の深い竹石氏だからこそ、今回のVRコンテンツの演出が生まれたのだ。また、この監督からの要望によって技術にも新しい学びがもたらされたことが後ほど垣間見える。

 

『至高のライブ体験』実現に向けて、新たなVR表現への挑戦

続いてトークは、具体的な制作裏側へと進んでいく。メイキング映像を見ながら、制作陣がさまざまな取り組みや苦労について説明していくという貴重な時間となった。


『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018 – “光” & “誓い” – VR』 メイキング映像 | PlayStation®VR

 

◆ 幕張メッセホールでのテスト

まず注目されたのが、本番の撮影に先立って行われたという「大規模なテスト」について。今回のVRコンテンツ制作においては、事前に幕張メッセホールに 「実際と同じ大きさのステージ」を作ってテストを行っていたというから驚きだ。(上記のメイキング映像の 0:03〜0:30がそこにあたる)

「様々な動きのテストや、カメラのテストを行って、どの表現が一番いいのかを探っています。本番が、ツアーの本番当日にお時間を頂いて限られた時間でやらなきゃいけなかったので、本番さながらのテストを繰り返していたんです。」と竹石氏は語る。

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この大規模なテストは、当初は予定していなかったという。

最初は予定は無かったんですよね。本番でどのくらい時間をいただけるかっていうのが分からなかったこともあったんですけれど。いろんなことを進めていくうちに、『どこがベストなのかを探していく、そうなるとその時間が必要だ』ということを技術さんたちと話して、お願いして実施しました。」

 

◆ 新たな音楽VR表現への挑戦に向けた、新たな機材の開発

これまでにないクオリティを求めるため、これまでになかった新たな機材の開発も行われたことも明かされた。この点については、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの林氏がこのように語っている。

「今回、『至高の音楽 LIVE VR 体験を』という話がありました。そこで『高品質な映像を作ろう』ということと、もう一つは『VRならではの新しい演出手法』、これらを肝にして開発させていただきました。

 今回会場が広い上に、真っ暗な中にスポットライトを当てるような撮影なので、カメラには解像度も必要ですし、それに加えて暗いところから明るいところまでのダイナミックレンジを取りながらもノイズの少ない画を作らなきゃならない、とかなり大変だったんです。

 業務用の4Kの小型のカメラ、それから最新の映画撮影用の6Kのカメラ、これらを組み合わせたVRシステムを提供させていただきました。』

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この特別なカメラシステムに加えて、新しい体験を創造するために「モニタリングシステム」も構築したという。監督が現場でOK/NGを判断できるよう、「リアルタイムでPlayStation VRのヘッドセットをかぶって、そこでモニタリング出来る」というシステムを新たに開発して提供したという。

竹石氏もこの点について「自分も要望は出しました。やっぱり体験を撮っているので、体験しながら撮らないと。単純にモニタの画を見てるだけじゃ伝わらない」と語っている。

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また、演出手法の新たなチャレンジであり苦労した点として、今回のVRコンテンツには「没入感を高めるための『移動』」の要素も入っていることも明かされた。「宇多田さんの目線を感じる3Dで撮影したい、しかも近距離で」という竹石監督からの演出要望、しかもクレーンに結んで移動させるという彼らも一度もやったこともないことにチャレンジしたという。

通常VRでは、体験者が意図しない動きをカメラがしてしまうと、いわゆる“VR酔い”を起こしてしまう。この要素にあえてチャレンジした理由を竹石氏はこのように語った。

今回は、没入感をいかに高めるかということを、さらにチャレンジングにやりたいなということで。動いているか動いていないか気づかないくらいで、本人に近づいたりしています。そのためのこれだけ大掛かりなことになりました。」

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こうした、長年、宇多田ヒカルというアーティストを撮影し、またVRにも精通した監督だからこその「演出観点からの、技術サイドへの新しい要望」について、林氏はこう語った。

「カメラの技術について、我々は「高画質」という点については得意なんですけれども、演出手法は監督やオペレーターと一緒にやらないとできないので。大変だったんですけれども勉強になりましたので、改めて感謝しています。」

 

そして、新しいチャレンジにはさまざまな課題もあっただろうが、それを協力でクリアしていったことがこの竹石氏のコメントからも伺える。いろんな新しい機材を使っているので、そこの“不自由さ”みたいなものが作品に出るのが嫌だなと思っていました。なので、そこは皆さんに感じてもらわなくても楽しめるものを作るために、できるだけ不自由なものはみんなで知恵を出してクリアしていきました。」

 

◆ 限られた時間の中、ツアーの成功とともに実現したVRコンテンツ制作

今回のVRコンテンツは、宇多田ヒカルの「Laughter in the Dark Tour 2018」の本番2日目のリハーサル前に撮影された。公演期間の真っ只中という、当然時間も限られてくるこのタイミングでなぜ撮影されたのだろうか。梶氏は「とにかく時間との戦いでした」と語り、このように続けた。

 

「まず、ツアーを成功しなきゃいけない、という前提が我々宇多田ヒカルのプロジェクトとしてはあります。そこでこのVRの撮影をいつ行うかは、いろんな形で議論されました。

 最初はやはり時間の余裕があったほうがいいということで、ゲネプロ(※補足 公演前に行われる最終リハーサルを指す)で撮ろうと動いていたんです。けれども、LIVEのクオリティというところを考えていくと、初日を終えて、本人もLIVEをひとつ形作れた状態でコンテンツを撮った方が良い、と考えました。当然、時間的な制約は出てくるんですけれども、多分仕上がりとして、ファンが満足していただけるものとして、本番と同じもの近いものができるというほうが絶対に良いのではないかと、と。

最終的にはさきほど話したとおり、ゲネプロではなく本番2日目のリハーサルの前に撮る、という形のチャレンジとなりました。」

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公演中の撮影ということで、撮影スタッフだけでなくコンサートスタッフも含めて全体がベストなパフォーマンスを出せるようコーディネーションすることが非常に難易度が高かったことが伺えた。

 

◆ 宇多田ヒカルの魅力を伝えるために、1cmレベルまで“距離”に気を配った演出を

そんな限られた時間の中でも、妥協の無い演出が行われたことが竹石氏から語られていく。

メイキング映像の 1:00〜1:08 では、実際にテストで撮影した映像を宇多田ヒカル本人に見せているシーンが映されているが、竹石監督からは“カメラとの関係性”について伝えたという。

「僕からは、実際にテストで撮ったVRを見てもらって『目を見つめるとどんなに素敵か』というところと、要するに『VRにおけるカメラはどういう存在なのか』という距離について説明しました。『PlayStation VR をかけたユーザーは1人しかいない、1対1』ということを理解していただいたので、細かなことを伝えなくても早く理解してもらえました。」

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また、演出の最もこだわったところを問われた竹石監督は「いかにアーティスト宇多田ヒカルが魅力的かを見ていただく、というところ」だという。

竹石氏は「こだわっていると言ったら『いかにアーティスト宇多田ヒカルが魅力的か』ということ。彼女が何をするかを理解していかなきゃいけないし、僕らもそういった雰囲気をつくってあげなきゃいけない。もちろん言葉には言わなくても、出来るような引き出し方を僕らの方で用意してやることもあります。
『いかにアーティスト宇多田ヒカルが魅力的か』ということを、僕らはとても近いところで仕事しているので分かっているんですけれど、それをぜひ見ていただきたいなと思って、その点はこだわりました。」とかたった。

特に、アーティストの魅力を引き出していくためのエピソードとして印象的だったのが、「1cmレベルのこだわり」だ。

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竹石氏は「ただ見られているだけではぐっと来ないなと思って、自分が『彼女に対してどの位置にいたらぐっとくるんだろう』、と “カメラの高さ” と “カメラとの距離” を1cm刻みで全部テストしました。」と語り、来場者を驚かせていた。

そうして生まれた今回のコンテンツは、竹石氏にとっても新しい魅力の発見があるほどのものとなったという。

「僕も長く宇多田ヒカルと仕事をやっているんで、こんなに自分を見つめられて歌われたことは無いんですよ。なので、ファンの方たちはもちろんすごく楽しめると思うんですけれども、僕ら長くやっているスタッフは、もう直視できない。そのぐらい、まぁ恥ずかしいというか。そういったところに到達できたのは、ひとつ成功したのかなと感じています。」

「改めてできたものをVRで見てみたときに、『こういうリズムのとり方するんだ、マイクこういう持ち方をするんだ』という細かいところが、体験として見れて新しい発見がありました。更に魅力的に見えるんじゃないんですかね。」

 

音楽VRの新たな体験創造に重要となる「ストーリー」、そして今後の「PROJECT LINDBERGH」

◆ 今回のVRコンテンツがなぜここまで反響が良かったのか

宇多田ヒカルにとってのVRは今回の案件が初めてではなかった。だが今回のVRコンテンツの先行配信では、より大きな反響が得られたという。前回と今回でどのような点が異なったのかについて、梶氏は興味深い見解を語った。ここには、音楽×VRコンテンツで新しい体験を生んでいく上で重要なエッセンスが含まれているため、しっかりとご紹介したい。

「何が違うのかなっていろいろ考えていたんですけれども、なるほどと思ったことがあります。前回と今回では『VRをやる前に生のツアーをやっているかやっていないか』が違いだと。

 コンサートツアー中にファンからのTweetを見ていると、素直な反応として『宇多田ヒカルって本当にいたんだ!』という反応が多かった。たしかにデビュー当時から、一般のお客様の前に出るチャンスがそこまである人じゃなかった。極端に言うと、曲に対しては勿論リアリティを持って受け取っていただいているけれども、本人に対するリアリティがなかった。

 ただ今回はツアーを事前に体験していただいたことによって、「あ、本当に人間としているんだ」と確認できた。その体験があった後に、SONYの技術を使って非常にリアルで、非常に近いVRコンテンツで宇多田ヒカルを見ると、リアルに感じるんだろうな、と。

 僕がマーケター担当として感じる前回と今回の違いはそこかなと思っています。勿論技術的な違いはあるんですが、そこは大きな学びでした。何が言いたいのかというと、ただVRコンテンツをやればいいというのではなくて『どういうストーリーでその体験があるのか』、『どういうタイミングでその体験があるのか』がすごく大事なんだなと。」

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そしてこの「ストーリーをもった体験の創造」とも言える考えについて、「宇多田ヒカルだから成立したのか」という質問に対して梶氏はこうも語った。

「宇多田ヒカルだから成立したというわけではなく、アーティストによってやり方が違うだけだと思います。宇多田ヒカルはこのやり方が正解だったかもしれないけど、違うアーティストで同じことをやっても同じ感動は得られない。

 そのアーティストならではのストーリーと、体験のタッチポイントの作り方によって、またこのコンテンツとは全然違う感動を与えられる可能性はあるんですよね。ただ同じことをやるわけではなくて、そこの作り方と、そこまでのストーリーが大事です。

 VRに限らず、また新しい音楽体験みたいなものを作っていくというのは、レーベルとしてもちゃんとやっていかなければいけない。そこの分野にはチャレンジしていきたいなと思っています。」

 

◆ ゲームを越えて、音楽のVRで新たな体験を生み出していく「PROJECT LINDBERGH(プロジェクト リンドバーグ)」

そして今回のVRコンテンツの実現において重要となったプロジェクト「PROJECT LINDBERGH」について。PS VRというと、VRゲームの筐体というイメージがあるが、今回のVRコンテンツの実現も含めて、音楽LIVEの実写VRにはまだまだ可能性があることが示された。

ゲームと違う新しい体験で、実写・実際に存在する人に目の前で会え、その存在感・視線を感じることができる、映像というより映像“体験”を提供できる、といったメッセージが送られた。林氏はこのように語っている。

「音楽LIVEの実写VRは非常にポテンシャルがあるのかな、と思っています。『PROJECT LINDBERGH』には、いろいろな部署の人が入って、音楽のさまざまコンテンツでクリエイターの方と一緒に、新しい楽しみ方を実験的に作っている最中です。

 音楽、と一言にいっても色んな音楽のコンテンツがあるので、それぞれにそれぞれの向いたやり方があり、その辺りを開発しています。今後も機会があるようでしたら、新しいチャレンジをしていきたいと考えております。」

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来場者からの鋭い質問から垣間見える、音楽VRの未来

短い時間にもかかわらず濃密な内容となったトークイベントの最後では、一般来場者からの質疑応答のコーナーが設けられていた。終始和やかな雰囲気ながらも、来場者からの鋭い質問への回答からは、音楽の新しい体験を考える上で重要なトピックが含まれていたので、ピックアップしていきたい。

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◆ 観客がいるLIVEとVR撮影の共存の未来

今回のようなクオリティで制作するには現状、前述のような大規模な機材が必要となってしまうが、来場者からは「この先の未来、お客さんが入ったLIVEで撮影されたVRを見てみたい、お客さんの有無でパフォーマンスも変わるんじゃないか」という質問が飛んだ。この質問に対して、竹石氏はこのように回答した。

「今、まだまだカメラも機材も大きいですけど、そのうちVRでも出来るようになると思います。

実際、お客さんと共存しながらLIVE映像を撮る、というのがVR以外では出来てきているんですね。僕が去年のツアーを撮ったときも、カメラを40台置いて撮りました。どんどんとカメラが小さくなってきているので可能になったんですね。

そしてご質問いただいているとおり、お客様の前でのパフォーマンスの方が違う、というのはまさに僕も分かっています。本当は1万人、2万人のお客様の前で撮ったほうが、表情が出ると思っています。」

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◆ 音楽LIVE VRの中に入っていけるようになるのか

ユニークだったのが「今後、もっと臨場感が得られるように(VRの)中に入ることもできるようになりますか」という質問。この質問について、梶氏は今後のインフラの変化も踏まえてこのように回答した。

そういう技術が今後、沢山出来てくると思います。バーチャルだけでいうと「輝夜 月」(カグヤルナ)というバーチャルユーチューバーが、お客様の中に入って(バーチャルスペースで)LIVEをやる、というのを実現しました。今後、世の中に 5G などの様々なインフラが出来てくると、一気にそういった技術が変わり、表現できる可能性が大きく拡がると思っています。

今回のVRに関しては、今出来うるものの最大限のものを投入したというだけであって、今後そういった技術が出来てくるなら、その時代時代にベストパフォーマンスをやっていきたいと思っています」

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ただ、この「ベストパフォーマンス」という点について、注意すべき点も語られた。

気をつけなければ行けないのが、ごくごく一部のハイスペックな機材を持った方々だけが見られるサービスになってしまうと、ファンによっては不平等が生まれてしまうということ。今回もPS4を持っていなければいけないというのはありますが、こういった体験会のようなものを開きながらやっています。『なるべく沢山の人達が見られる技術の範囲内で、最高のものを見せる』というさじ加減を気をつけなければいけないと思っています。」

 

ソニーグループの力で生み出された新しい音楽体験、未体験の方はぜひチェックを

映像ディレクター、プロデューサー、マーケター、技術者が揃って、今回のチャレンジの背景について語った本イベント。45分ほどであったが、非常に濃密で学びの多いイベントであった。

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『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018–“光”&“誓い”–VR』は、PlayStationStore で一般配信されており、PlayStation VRとPS4を持っている方なら無料で体験することができる。

ぜひ今回の記事を読んで、コンテンツを体験してみてほしい。

 


2019-01-23 | Posted in VR/AR, イベント/LIVE | by Yuki Abe
Yuki Abe

Yuki Abe

マーケティングコミュニティプラットフォーム「cocosqure」の開発 及び 音楽・エンターテイメント音楽とテクノロジーを掛け合わせたプロダクト/サービスの情報発信および開発を行っている“エンターテック・テクノロジスト/ソフトウェアエンジニア”。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。