【15th TIMMレポート】(1) アジアにおける日本アーティストの活躍の可能性
カテゴリ:イベント/LIVE
2018-12-16

10月22日(月)、23日(火)、24日(水)の3日間、日本の音楽進出・音楽交流を目的とし、多数の国内音楽事業者・海外バイヤーが来場する国際的なイベント「第15回東京国際ミュージック・マーケット(15th TIMM)」が開催された。

3日間で5,710名(マーケット参加:2,915名、ライブ・パーティ参加:2,795名)が来場し、昨年を大きく上回る盛況を記録した今回のTIMM。その中でもBAKERYは、TIMMの中で開催された「海外展開に役立つ音楽業界の最新トレンド」をテーマにしたビジネスセミナーから、今後の日本の音楽ビジネスとその周辺で重要となるであろうトピックを、前後編に分けてレポートする。

前編となる本記事では、「アジア市場へのチャレンジの可能性」についてレポートしていく。
(レポート後編はこちら

 

アジアの音楽フェスティバルの現状、中国のライブハウスにおける可能性

音楽フェスティバルの増加、そこに日本のアーティストの参入の可能性も

ビジネスセミナーのオープニングを飾ったセミナー『アジアにおけるフェスティバルの現状と日本アーティストの可能性』。韓国最大級のフェス『INCHEON PENTAPORT ROCK FESTIVAL』、中国最大級の音楽フェスティバル『MIDI MUSIC FESTIVAL』と『Strawberry Festivals』のオーガナイザーが登壇し、彼らのフェスの思想の紹介と共に、日本のアーティストがより一層アジアの音楽フェスへ打って出ることの重要性、可能性について語られた。

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世界的にも音楽フェスティバルの開催が増えている中、このトークの中でも語られたことの一つに「ファンと音楽との出会いにおける“音楽フェス”の重要性」が挙げられる。

韓国・中国共に、音楽ストリーミングサービスが一般化した市場となっている。そんな中での“音楽との出会い”はSNS活用と共に、ストリーミングでは代替できないコンサートがやはり重要なものとなっているという。Tommy Jinho Yoon 氏は、日本アーティストが音楽フェスに参戦することの重要性を以下のように語った。

「新しい日本のバンド・アメリカのバンドがフェスに出演する、それを聴いたオーディエンスがそのバンドを好きになるという流れ、これによってファンベースが増えて来ている。ストリーミングも重要だが、ITだけでなくこうしたLIVEミュージックが韓国では重要となっている。」

またこのセミナー後半では、トークと並行して「アジア・マーケット&フェスティバル <台湾〜中華圏〜韓国〜東南アジア>」と題した情報スライド投影されていた。

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creativemanによってまとめられたこの資料で、台湾・香港・中国・韓国の公演に関する概況、各国の主要な音楽フェスティバルの紹介、さらには東南アジアのプロモーターについての情報が次々とシェアされていく。
特色豊かな音楽フェスティバルが次々と生まれている今、こうした情報を短時間で得られる機会はより重要になっていくだろう。

残念ながらこの資料はWEBでは公開されていないようだが、資料中で紹介されていたIFPIの「Global Music Report 2018」(リンク)は、改めて目を通して置きたい資料だ。

 

中国で増えるライブハウス、より求められるアーティスト

より中国にフォーカスしたセミナー『中国における日本アーティストのプロモーションとライブ事情!』で注目したのは、“中国のライブハウスシーン”だ。

このセミナー後半は「中国ライブエンターテインメント市場の現状」と題し、中国のライブエンタメ、特にライブハウスにフォーカスしてナレッジがシェアされていった。

中国のコンサート市場は成長を続けていることはよく耳にするが、特に現在“ライブハウス”のニーズが高まっているという。それを示したのが、中国のデータをマイニングしている北京道略管理諮詢有限公司の毛 修炳 氏だ。

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現在中国ではライブハウスが年々増えてきており、中国のアーティストだけでは満足できない状態にあるという。それに対し、日本アーティストの影響力はまだ弱いこと、裏を返すとまだまだポテンシャルがあるという視点を毛氏は伝えた。

「音楽フェスにおけるシェアを見ても、まだまだ日本人アーティストの参加は少ない。これはポテンシャルはまだあるという状況だ。ぜひ中国でライブを行っていただきたい」

 

また、CHARISMA TANUKI PRODUCTIONSの陸 金氏からは、日本のアーティストがライブハウスへ進出していくにあたっての、実践的なアドバイスが紹介されていく。中でも重要だと感じたのは「出演するライブハウスの選択の仕方」だ。

「中国での日本人アーティストの展開において、どのライブハウスを選ぶのかは重要だ。最初は200〜300人くらいの収容人数を選び、そこから回数を重ねて行くべきだ。」

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さらに、中国のライブハウスの質はどんどん高まっていることにも言及。設備・照明・テクニカルな部分のチームについても、飛躍的に向上しているという。これまでこの点に不安を感じ、チャレンジを避けてきたアーティストにとっても新たな可能性が生まれてきている。

 

 

中国に日本アーティストがしかけるための、SNS活用の重要性

このように、現在中国を始めとしたアジアのマーケットにおいて、ハードルも下がり新たな可能性が生まれてきている。それが語られると共に、重要なものとして頻繁に挙がったのが「SNSの活用」だ。TIMMのビジネスセミナーにおいては、特に中国における独自のSNS圏に、どのようにアプローチすれば良いかも多く語られていた。

 

リスナーの接触するSNSを理解し、そこに情報を載せていくことが重要

前述したセミナー『アジアにおけるフェスティバルの現状と日本アーティストの可能性』でも、中国リスナーにとっての「音楽との出会い」で重要なものとして、音楽ストリーミングサービスの活用に加えて、「SNSを活用すること」が挙げられた。

「中国版FacebookであるWechatといったサービスに情報を載せることが必要だ」

これは『中国における日本アーティストのプロモーションとライブ事情!』で陸金氏も同様の意見が挙げており、さらにネットを活用して「日本語の歌詞の意味も含めて聞かれている」ということを伝えた。

「Weiboは日本人もわかると思うが、Wechatはさらに重要度が高い。」
「ネット時代の現在、そのアーティストがどういう音楽をやっているのかを知りやすい状況になっている。」
「さらに音楽(音)だけじゃなく、歌詞が重要だ。中国人は歌詞を見ている。日本語の歌詞であっても、有志が翻訳してネットに上げており、歌詞の意味も含めて聞かれている」

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日本ではFacebookやInstagram、TwitterなどのSNSが一般となっているが、こうした中国独自のSNSを理解し、適切にアプローチしていくことが今後一層求められている。

 

既に始まっている動き 「Music Channel-J -日本音乐在线-」

そんな中で、中国のSNS圏に的確にアプローチしようという動きとして大きく紹介されていたのが、日本音楽制作者連盟が立ち上げた「Music Channel-J -日本音乐在线-」だ。
中国における日本アーティストのプロモーションとライブ事情!』の前半では、㈱アミューズ アジア事業部長/(株)アミューズ上海 董事・総経理の山内 学氏が登壇し、現在の中国の視聴動向から、このサービスの現状と今後について紹介された。

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“携帯での支払い、キャッシュレスが進行中”・“国自体は高齢化して来ているが、消費者は若い”という中国。そこではWeChat、WeiboといったSNSの活用がやはり重要だとして、今年8月から「Music Channel-J -日本音乐在线-」はスタート。Weiboにて展開を始めており、日本アーティストを中国現地の音楽ファンやプロモーターなどの音楽業界関係者に向けて情報発信するプラットフォームとして機能している。

現在、レーベルや所属会社を超えた9組のFeaturing Artistsが、このプラットフォームを通じて、中国でのライブ情報、イベント出演情報、そして日常の素顔などを配信している。

このように、組織として海外への進出をサポートしていく動きはますます重要となる。この「Music Channel-J -日本音乐在线-」がどのように展開・拡大していくのかをチェックすると共に、また今後、日本アーティストが海外へ進出することを支援する新たなプラットフォーム・サービスが登場してくるか、注目していきたい領域だ。

 

 

日本のアーティストがアジアへチャレンジするためのハードル、それを越えるためのナレッジシェアの重要性

国内にとどまらず、世界に向けてチャレンジしていくアーティストが増えている昨今。そんな中でも、やはり各国の音楽産業のルール、音楽視聴動向を理解をした上で活動することが重要となる。

ただそういった情報はなかなか得られないものだ。そういったアジアの見えにくいルール・ハードルを知るための機会として、TIMMのビジネスセミナーは機能していると感じる。TIMMではその他にも、中国の現在の著作権管理に関するセミナーなど、注目すべきセミナーも開催されていた。

このTIMMセミナーの発信した情報から、どのような動きが生まれるのか。そして来年のTIMMで新たな事例が発信されるのか期待したい。

後半レポートでは、よりグローバルな視点で行われたセミナーについてレポートする。
(後半レポートはこちら

 


2018-12-16 | Posted in イベント/LIVE | by Yuki Abe
Yuki Abe

Yuki Abe

マーケティングコミュニティプラットフォーム「cocosqure」の開発 及び 音楽・エンターテイメント音楽とテクノロジーを掛け合わせたプロダクト/サービスの情報発信および開発を行っている“エンターテック・テクノロジスト/ソフトウェアエンジニア”。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。