ゲームに留まらずエンターテインメントの可能性を拡げる、Unityの魅力に迫る『Unite Tokyo 2018』レポート
2018-05-28

今、Unityが面白い!と言うと、すでに開発している人から「何を今更」と言われるかもしれない。

ただ、改めて「Unityの可能性がより一層拡がっている」と感じさせてくれたのは、2018年5月7〜9日に東京国際フォーラムにて開催された、Unityの国内最大カンファレンス『Unite Tokyo 2018』だ。

多くのUnity開発者が集まり、交流しながらナレッジや展望をシェアするこの一大イベントでは、Unityの持つさまざまな可能性が発信されていたこのイベント。なぜ、今改めてUnityに注目すべきかを、BAKERYとして注目したトピックと合わせてご紹介したい。

Unite2018 top

 

 

そもそもUnityとは何か?

そもそも『Unity』とは何か。『Unity』とはUnity Technologiesが開発する“ゲームエンジン”だ。

ゲームエンジンとは、ゲーム開発をより簡単にするために共通的な処理を提供してくれるソフトウェアであり、中でも『Unity』は「ゲーム開発の民主化」を掲げ、開発者のクリエイティビティを最大限発揮できるようなさまざまな機能やプラットフォームを提供している。

また、モバイルやデスクトップPC、ゲーム機などさまざまなプラットフォームへの対応を簡単にする「“マルチプラットフォーム”への強み」と、「インディーズゲーム開発者にもやさしいライセンス形態」で、多くのゲーム開発に利用されてきた。

Unity
Unity公式ページより

 

特に後者のイメージから、Unity = インディーズゲームのイメージを持つ人も多いと思うが、昨今ではクオリティを向上させるさまざまな機能が登場し、市販のゲームにおける活用、さらにはアニメーション制作やVJに活用するなどの拡がりを見せていることはおさえておきたいポイントだ。


この『ADAM』もUnityで開発されている。

それでは、どんな可能性が垣間見ることができたのか、『Unite Tokyo 2018』からいくつかトピックをピックアップしていく。

 

引き続き注目度が高まるxR、その中で存在感を放つUnity

毎年、Unityの今後の展望・最新機能が発表される、Unity Technologiesによる『基調講演』。

2018年も、デベロッパー・アーティストの開発を高速化し強力にサポートする新機能が紹介されていく中、目を引かれたのがxR(VR・AR・MR)への注目度の高さと、xR領域におけるUnityの存在感だ。

講演の中でも紹介された数字が、『Oculus Rift』・『HTC Vive』・『Gear VR』・『HoloLens』といった主要xRハードウェアごとの開発シェアだ。いずれのハードにおいても、Unityは過半数以上のシェアを獲得、xR開発のスタンダードになりつつあることが伺える。

XR1各xRハードごとのUnityシェア。HoloLensにいたっては90%を超えている。

 

また、UnityはさらにxRに関しての研究・開発にも取り組んでいる。中でも驚きの声が挙がっていたのが、講演においてパフォーマンスされた『Carte Blanche』。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を付けて、バーチャル空間上でパーツを置いていくようにゲームステージを完成させていく。すると、そのままシームレスに、自身で作った空間でFPSシューティングができる、というパフォーマンスデモだ。

CarteBlanche1
デモパフォーマンスされた『Carte Blanche』

 

CarteBlanche2
VR空間上で、ゲームの“創造”から“プレイ”までをシームレスに

 

VR空間内でデザインを作っていくことによる新たなパフォーマンス、作品づくりについては度々話題になっているが、高いクオリティでのパフォーマンスに触れると、確かに新しい感覚をもたらしてくれる。

この感覚を端的に表す言葉として紹介したいのが、基調講演の中でSylvio Drouin氏がスライドで示したこの未来予測。
‘創る’と‘遊ぶ’という概念はひとつになる

Tsukuruasobu

 

“創り手と受けて”という関係性が、さまざまなテクノロジーによって溶け始めている昨今。エンターテインメントにおいてもさまざまな場面でこのキーワードが一層重要になっていくものだと感じさせてくれる。

Unityの未来を捉えるため、この基調講演の資料は一読しておきたい。(動画も後日公開予定とのことだ)

 

 

ディスプレイを超えたUnityの活躍、リアルエンターテインメントでの活用

音楽・エンターテインメント×テクノロジーを標榜するBAKERYとしては、ディスプレイに収まるゲームも然ることながら、やはり“リアル空間でのエンターテインメント”にも注目したい。

 

その一つが、チームラボ株式会社/インタラクティブチームによる「チームラボ × Unity Unityで制作するデジタルアートの世界」だ。鑑賞者に驚きをもたらすアート作品から、子供も大人も楽しめる体験型エンターテインメントコンテンツまで開発するチームラボも、特にインタラクティブな作品においてUnityを活用している。

TeamLab1

 

このセッションでは、アート史からチームラボのコンセプト、実際の作品におけるUnityの活用方法・Tipsへと話が展開されていく。チームラボのコンテンツでは10台以上のPCや40台以上のプロジェクター、大量のLED立体ディプレイなどが活用・連携されており、通常のゲームとは異なる場面における制作・展示のナレッジ・Tipsが紹介された。

TeamLab2

TeamLab4
なかなか見ることのできない“裏側”のテクニックが紹介された。

 

大きな規模でのコンテンツ制作などを行っているチームラボ。openframeworksやMax/MSPなどとさまざまなデータ連携を行いながら、人に感動や楽しみを与えるインタラクティブコンテンツを生み出していく。その裏側の技術を知ることができるのはUniteならではの楽しみであり、またそんなタフな開発の中で活用されうるUnityの可能性を感じられる。

 

さらに、ライブエンターテイメントにおけるUnityの活躍可能性を見せてくれたのは、ラテンセイル&ライブグラフィックスによるセッション『マジで!?Unityだったの!?次世代エンターテイメントの裏側』だ。

ニコニコ超会議で上演された歌舞伎と初音ミクのコラボレーション「超歌舞伎」や、中国でのテレビ番組におけるARに携わっている同社。それら事例で活用した技術や、リアルタイムの現場に対応するためのさまざまなTipsを、ユーモアと共に濃縮され届けられたセッションとなった。

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写真は同社プレスリリースより

 

完全非公開のセッションのため、同社のプレスリリース以上の具体的な内容をご紹介できないのが非常に残念だが、実に濃厚な50分間となった。

その時・その場での“生”が重要となるLIVEエンターテインメント。その価値を高める映像パフォーマンスにおける「限界のあるPCの処理能力に対して、リアルタイムで映像をレンダリング・生成し、いかに違和感なく見せるか」という点は、ゲームにも通じるものがあり、ゲームエンジンの強みが発揮されるものだ。

その知見をもったゲーム開発者が、リアルエンターテインメントへ進出することによる化学反応が今後起きるのか、実に楽しみだ。

 

 

全編通じて存在感を発揮した“VTuber”

『Unite Tokyo 2018』全体を通じて存在感を発揮したものとして取り上げなければならないのは『VTuber』だろう。

“バーチャルYouTuber” を意味するこの『VTuber』。モーションキャプチャなどの技術の普及により多くのキャラクターが登場し、人気を高めている。(“Tuber”とあるが、YouTube以外にもさまざまな生配信プラットフォームで活動しているバーチャルキャラクターを総称している)

今回の『Unite Tokyo 2018』では基調講演冒頭にキズナアイによるコメントムービー上映され、また『VTuber』をいかに実現するか、より生き生きと見せるかというセッションが数多く行われていた。

VTuber1
基調講演前に登場した キズナアイ

 

VTuber2
セッション『AniCast!東雲めぐちゃんの魔法ができるまで』より

従来では高価・高コストなモーションキャプチャの機材などが必要となっていた、バーチャルキャラクターのリアルタイムによる自然な振る舞い。それがさまざまな技術的工夫により、より安価に かつ より自然に/魅力的に実現可能になっている。

今後より一層普及していくにつれ、リアルな人による配信とVTuberによる配信の境はなくなっていくだろう。

 

 

ゲームを超えたビジネスへの適用 ~ ゲームが社会に混ざっていく

Unityのパワーは、エンターテインメントコンテンツだけには留まらず、産業界にも影響を与えている点にも触れておきたい。

Unityを用いたxRコンテンツの開発・活用は製造業・メーカーでも進められている。今回の『Unite Tokyo 2018』でも、自動車メーカー トヨタでの活用事例についてセッションが行われており、その一つ『トヨタのVR/HoloLens活用事例ご紹介』では、立ち見が大量に出る程注目を集めていた。

XR3
席は満席、さらに立ち見が通路に溢れていた

教育トレーニングや、カスタマーサービスへの活用など、さまざまな取組が進められているという。

既に3Dモデルを有している企業がUnityを使うことで、ユーザーの操作へのインタラクションなどの開発を大きく省略することができる。それによって、より活用の可能性が拡がっていくことには注目していきたい。Unityでは、非エンジニアでもより簡単にコンテンツを開発するための、さまざまな機能を次々とリリースしており、そのチャレンジの壁はますます低くなってきている。

 

また、エンターテインメント要素と学術研究のクロスオーバーとも言える事例として注目したいのが、だるまジャパンと名古屋大学によるセッション「裸眼で拡張現実!!プロジェクションマッピングとAIで世界最先端研究を丸見えに」だ。

プロジェクションマッピングを応用して、裸眼でAR的表現をおこなってきた『だるまジャパン』が、その知見を大学研究に注入したという事例だ。

これまで装置内部を見ることはできず、数値を追いながら研究するしかなかった“結晶成長”を、Unityとプロジェクションマッピング、AIを用いてリアルタイムに可視化する、という取り組みは実に面白い。

Darumajapan2

 

誰も見たことがない装置内部を、想像力と技術を持って可視化し、より直感的に研究を進められるようにした本事例。それはイメージを現実のように体感させる“ゲーム的な技術”・“エンターテインメント的思考”が、他業種のパワーを高めることに繋がりうる、と示してくれる。

また、こうしたリアルタイムでの映像の生成をより簡単に・クオリティ高く開発するために、ゲームエンジン Unityは強みを発揮している。

Darumajapan3
円筒状の装置にプロジェクション・マッピングされた映像によって、透視しているように見える。

このトヨタや名古屋大学といった、本来ゲームとは遠いと思われるものでもゲームエンジンのパワーが活かされうる、という感覚は覚えておきたいと感じた。

 

ゲームから他業種の、さまざまな場面へと拡がっていく – 人材の流動により広がりうる未来

今回、あえてUnityの“ディスプレイゲームを超えた活用可能性”について触れてきたが、もう一つポイントとしておさえておきたい点がある。それは「ゲーム業界と他業界との人材交流による新たな可能性」だ。

リアル空間におけるエンターテインメント表現系のセッションで頻繁に語られたのが「ゲーム業界のエンジニアが入ってきてくれることで、より進んだものが作れる」「ゲーム以外の領域でもゲームエンジニアは活躍できる」というメッセージであった。

筆者もゲームにおけるレベルデザインやエンジニアリングナレッジについて学ぶ中で「制約の中で、ユーザーに違和感を感じさせず、楽しみに繋がる“負荷と教育”を与え、のめり込ませていくための独自ナレッジがゲーム業界にはまだまだ多く存在しているということを強く感じる。現実の事象を、シミュレーション可能で活用可能なレベルまで解像度を下げて再現する、という思考や理論・技術も、より“ゲーム的”な世の中において一層重要なものとなっていくだろう。

 

そんな技術を汎用化し、誰でも使いやすく・開発しやすくしていくUnityやUnreal Engineといったゲームエンジンの動向には、今後も注目していきたい。

ディスプレイを超えて、ユーザーを新しい次元の体験へとハマらせていく“ゲーム的思考”と“それを支える技術の民主化”。このトレンドをいかにフォローし、取り込んでいけるかが、さまざまな分野で求められていくだろう。

 


2018-05-28 | Posted in イベント/LIVE, エンターテック | by Yuki Abe
Yuki Abe

Yuki Abe

マーケティングコミュニティプラットフォーム「cocosqure」の開発 及び 音楽・エンターテイメント音楽とテクノロジーを掛け合わせたプロダクト/サービスの情報発信および開発を行っている“エンターテック・テクノロジスト/ソフトウェアエンジニア”。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。