SXSW2018でSONYが提示した体験の未来 『WOW Studio』レポート #SXSW2018
2018-04-06

SXSWで昨年も大きな存在感を示し注目を集めた SONY が、今年2018年はもっとパワーアップしていた!

SXSWレポート第5弾の本稿では、音楽・テック・カルチャーの祭典の中でも際立って存在感を発揮していたSONYブース『WOW STUDIO』(ワオスタジオ)から、特にBAKERYとして印象的だった展示をピックアップし、レポートする。

 

4日間で累計1万5000人超を記録した“WOW Studio”

SXSWの中心となるAustin Convention Centerからイースト1stストリートを挟んですぐ隣。3月10日(土)から13日(火)の4日間、新しいエンターテインメント体験を提供し存在感を示したのがSONY 『WOW Studio』 (ワオスタジオ)だ。

WOW Studio Exterior 2
倉庫2棟に及ぶ広いスペースに、SONYのワクワクする展示が集まった 『WOW Studio』
未公開のものを含むソニーの最新技術やプロトタイプを活用した研究開発段階のプロジェクト、およびスポーツやアトラクションなどを組み合わせたエンタテインメントコンテンツなどを展示したこのブースは、4日間のOPENにも関わらず、累計1万5000人を超える来場者数を記録した。

数多くのイベントやブースが催されたSXSWの中でも、間違いなくトップレベルで注目されたブースだ。

WOW Studio Exterior 3
『WOW Studio』 の入り口、カラフルなネオンの“W”がお出迎えしてくれる

YouTubeより 「WOW studio Digest Movie」

 

触覚提示技術(ハプティクス技術)を組み合わせた、新体験のホラーハウスや新感覚エアーホッケーなど、様々な“新体験”を展示したこのブース。その中から、音楽・エンタメ×テクノロジーの視点で特に面白かったものを紹介していこう。

 

体験型エンタメ設備としても、パフォーマンスステージとしても可能性を感じる『Interactive CUBE』

入口を通り、話題のaiboと触れ合えるコーナーを横目に奥へ進んでいくと、目を引くステージがある。それが『Interactive CUBE』だ。

Interactive CUBE

 

“巨大な立方体にプロジェクター映像、音、光そして振動(触覚提示技術)を用いた、人々の五感に訴える体験型エンターテインメントステージ”という、この『Interactive CUBE』。

左右に2つ並べられたBOXには、手前側に透明スクリーン、奥側にもスクリーンが配置されており、ステージの天井に吊られた“4台のプロジェクター”からそれぞれに像を投影することで、奥行きのあるプロジェクション空間が作られる。

また、中に入った体験者の動きをセンシングする仕組みも備え、動きに合わせた体験型インタラクティブコンテンツが展示されていた。以下の動画から、その様子が見ることができる。


YouTubeより 「SXSW2018 | Sony | WOW studio Interactive CUBE」

 

また、夜にはクリエイター集団『SIX』とコラボレーションし、ステージパフォーマンス『Lyric Visualization by Live DJ』が披露された。

DJブースが『Interactive CUBE』内に配置され、DJが流す楽曲に合わせて歌詞が映し出されていく。

『Lyric speaker』の美しいLyricビジュアライゼーションに加え、前方・後方の奥行を活用したVJ映像は、未来的 かつ 音楽の“メッセージ”をより感じられるパフォーマンスとなった。

djvj1

djvj2

 

体験型エンタメ設備としても、また自由度の高いパフォーマンスステージとしても可能性を感じるこの『Interactive CUBE』。これからどのような活用が出てくるのか、注目だ。

 

 

SONYの音響技術 × Kimchi and Chips × evala による圧倒的な没入感『Acoustic Vessel “Odyssey”』

SONY『WOW Studio』の展示の中で、実は筆者が個人的に最も楽しみにしていたものが、『Acoustic Vessel “Odyssey”』だ。

SONYが研究を重ねてきた“波面合成技術”でコントロールされる576chものスピーカー。それをサウンドアーティスト evala が巧みに扱い、生み出される“音の空間”。その空間を横断するように配置された、デジタルメディアアーティスト Kimchi and Chips による非日常な光のインスタレーション。

それぞれが融合し、圧倒的没入空間がそこに生み出されていた。

Odyssey

 

言葉では表現し難いこの“空間”がどんなものだったか、さらに SONY・evala・Kimchi and Chipsそれぞれのコメントが収められた“メイキングムービー”が公開されている。これは是非チェックしていただきたい!


YouTubeより 「Acoustic Vessel “Odyssey” -Sonic Surf VR-」

 

なお、この『Odyssey』で利用されている、SONYの『Sonic Surf VR』は2018年6月に発売予定とのことだ。どのような形で発売されるのか、またどう活用されていくのかはBAKERYでもフォローしていきたい。

 

 

ヘッドプロジェクタから投影される新しい“視覚”体験『Superception “Head Light”』

『WOW STUDIO』の中でも、最も試験的なものであり様々な可能性を示唆してくれたのが『Superception “Head Light”』だ。

Superception 2

 

“Superception”はSONY CSLの一プロジェクトであり、『コンピュータ技術を用いて人間の感覚に介入したり、人間の知覚を接続することで、工学的に知覚や認知を拡張、変容させる研究の枠組み』を指している。(https://www.sonycsl.co.jp/tokyo/3918/)

この『Head Light』ではHead Light(ヘッドギアのようなウェアラブルプロジェクター)から視界にプロジェクション・マッピングすることで、“コウモリや蚊など人間ではない生き物の知覚世界”や“さらに拡張された知覚の世界”を体験できる、というものだ。


YouTubeより 「SXSW2018 | Sony | WOW studio Superception」

 

この『ウエアラブルプロジェクションMixed Reality技術』は未だ研究色が強いものだそうだが、“既存のVRなどとは違う形で知覚体験を拡張するもの”として、今後多くの活用ができそうな技術だと感じる。

 

また、この『Superception』で注目したい点が “ブースの外” にもあった。
VRなどの展示では、体験している人以外に“それがどのようなものか”が伝わりにくいという面がある。しかしこの『Superception』では、ブースの外に以下の写真のようなインタフェースが表示されており、どのようなものかが第三者にも分かりやすくなっていた。(尚且つ、このインタフェースが格好いい)


ブース外のディスプレイに表示されていたインタフェース。伝えにくいVR系の表現としても参考になる。

 

 

未来に触れ、新しいコミュニケーションと“WOW”が生まれる場

多くの展示があった中から、特に筆者の琴線に触れた3つをレポートさせていただいた。

『WOW Studio』はただ技術事例を展示するのではなく、来場者の “楽しさ” を生みながら先進技術に触れられる体験型展示になっており、会場は来場者の笑顔、驚きの声で溢れていた。それが実に“SXSW” の空気感にマッチしている、と感じる。楽しんで技術に触れてもらい、その中から自然な対話・フィードバックが生まれていくのが、実に素敵だ。

2017年から、さらにSXSWらしく多くの人に“WOW”を産んだSONY。ここからどのようにそれぞれ展開していくのか、より多くの“WOW”が生まれるのを期待したい。

 

2018-04-06 | Posted in VR/AR, イベント/LIVE, エンターテック | by Yuki Abe

Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。