SIXと蔦屋家電が世界に先駆けて公開、針を落とすと歌詞が浮かび上がる『COTODAMA レコードプレーヤー』に注目!
2018-04-23

毎年第三土曜日はレコードストアの文化を祝い、フィジカルメディアを手にする喜びを共有する日『RECORD STORE DAY』だ。今年2018年のRECORD STORE DAYとなる4月21日は、都内でもさまざまな取り組みが行われていた。

そんな中、音楽・エンタメ×テクノロジーにフォーカスするBAKERYが注目したのが、株式会社SIXと蔦屋家電がこの日に初公開した 『COTODAMA レコードプレーヤー(プロトタイプ) 』 だ。

BAKERYでも何度も取り上げている『Lyric speaker』の技術が、アナログレコードの視聴体験に組み合わされたと聞いては、見に行かずにはいられない! ということで、世界に先駆けてこのプロダクトを展示をしている『二子玉川 蔦屋家電』にて実際に体験してきた。

Cotodama up
RECORD STORE DAYを祝したプロダクト、一体どんなものなのだろうか

 

 

世界初のデモ展示、場所はライフスタイルを提案する『二子玉川 蔦屋家電』

音楽好きは心躍るに違いないプロダクトが展示されているのは、最先端の技術を駆使した製品からクラシックなデザインまで、幅広くライフスタイルを提案する家電店『二子玉川 蔦屋家電』だ。

Tsutayakaden
RECORD STORE DAYだった4月21日、東京は夏を思わせる陽気で、二子玉川 蔦屋家電は多くの人手

 

生活を豊かにするさまざまな本や家電が並ぶ、蔦屋家電の洒落た空間を進んでいく。

目的地は1階の音楽フロア。そこにはRECORD STORE DAYを祝うレコードが飾られたコーナーが出来ており、噂のプロダクトが展示されていた。

Cotodama hiki
「1階音楽フロア」にそのプロトタイプが。多くの来場者が足を止めて見入っていた。

 

 

アナログレコードの“古くて新しい体験” 〜 針を落とすと歌詞が浮かび上がる「COTODAMA レコードプレーヤー」

展示ブースに近づくと、そこには念願の「COTODAMA レコードプレーヤー」プロトタイプ。間近で見ることができた。

Cotodama front
「COTODAMA レコードプレーヤー」の姿。向こう側には奥のスペースが見えているが、幕を降ろして展示するパターンもあるそう。

 

Cotodama leftyori
透過ディスプレイの美しさに目が惹かれる

 

黒を基調にした筐体は、存在感がある。デモ機と聞いていたが、もう製品ではないかと思うほど洗練されたデザインだ。

そして今回、デビッド・ボウイのレコードをかけてもらい、その歌詞のビジュアライゼーションを鑑賞させていただいた。
針を落とし、レコードならではの暖かみのある音が聴こえると共に、透過ディスプレイに楽曲名が表示される。そこから歌詞の美麗なビジュアライゼーションが展開されていく。


動画) 透過ディスプレイに映し出させれる、美しい歌詞のビジュアライゼーション。アナログレコードの暖かな音と歌詞のコラボレーションは一層味わい深い。
楽曲に合わせて歌詞が表示される、という感覚は『Lyric speaker』でも体験していたが、この『COTODAMAレコードプレーヤー』ではまた違った体験だと感じる。

“アナログ”・“よき音楽”の象徴であるレコードに針を落とした途端、透過ディスプレイに未来的なビジュアライゼーションが表示されていく。アナログからデジタル、古きと新しきが混在するこの感覚は、一見の価値ありだ。

 

また今回、実際に来場した方に感想をインタビューを実施してみた。

「レコードでこういうことができるんだと驚いた。すごい!」という驚きの声、「デザインが格好いい。ディスプレイの透明感も未来的だ」というデザインへの評価の声もあった。

また、レコードとテクノロジーの親和性について語る声も。「レコードを聴く人は、音楽に、そして機材にこだわりを持つ人が多い。そんな方にとてもマッチするプロダクトなのでは」という意見からは、このプロダクトの可能性を感じさせる。

 

 

COTODAMAエンジニア 星 伸貴氏へのインタビューが実現

幸運にも今回、COTODAMAのエンジニアであり、今回の『COTODAMA レコードプレーヤー』の開発者である 星 伸貴氏 にインタビューを行うことができた!
『COTODAMA レコードプレーヤー』の背景や想いを存分に伺えたインタビューをお届けする。

 

2017年からの構想が実現、RECORD STORE DAYを祝うデモ機へ

— 今回のこの『COTODAMA レコードプレーヤー』、構想はいつ頃からあったんでしょうか?

星氏:Lyric speakerの開発を通じて多くの方と対話してきた中でレコード好きな人は歌詞に対しての造詣が深いという発見があり、「レコード再生から歌詞が浮かび上がる体験が創れたら!」と模索してきました。ただ、どう実現しようか、というのがハードの面も含めて決まりきっておらず。

18年のRECORD STORE DAYにカタチにする!ということだけを決めていたのですが進展が無く焦っていたところ、今年の2月くらいに技術的なブレイクスルーがあり、技術協力してもらっている株式会社シンクパワーと「出来るかもね!」という話になって。そこから弊社のハードエンジニアと開発し、RSD直前の1週間前にデモ機が完成しました。

ということで『Lyric speaker』を販売していただいている蔦屋家電さんに急遽ご相談し、RECORD STORE DAYというタイミングに合わせて、今回のデモ展示が実現しました。

Cotodama narabi
『Lyric speaker』と並んで『COTODAMA レコードプレーヤー』が展示、ファンとしてはなんとも嬉しい!

 

— 歌詞のビジュアライゼーションが本当に美しいですね。これは『Lyric speaker』の技術が使われているんですよね?

星氏:そうです。『Lyric speaker』のエンジンが組み込まれています。

 

— 『Lyric speaker』だと、デジタルの音源から通信して歌詞を…とイメージが出来るんですが、アナログレコードからどうやってこのような楽曲にシンクした歌詞ビジュアライゼーションが出来ているのか不思議に感じます。

星氏:これはアナログレコードについて知っている方ほど不思議に思われるんですよね。

実はこのレコードプレーヤーにマイクを埋め込んでいてスピーカーから再生されたレコード音源から、曲を自動識別してクラウドから歌詞を取得、それをビジュアライゼーションする、という仕組みになっています。曲の速度が変わっても検出率が安定しているか、現在再生位置の検出精度が高いか、など検証を重ねてレコード再生に適した技術を組み込みました。

 

— ああ、なるほど! ただ、仕組みを伺っても、ここまで綺麗に出せるものなのかと驚きます。決まったものを出しているのではなく、楽曲を読み取ってリアルタイムで通信・ビジュアライゼーションしているんですもんね?

星氏:そうです。

 

— 音楽好きにはたまらない魅力が詰まったプロダクトですよね!今後の市販などはあるんでしょうか?

星氏:製品化の予定は今のところなく、あくまでプロトタイプなんです。

我々としても今後これを出していくかどうかも含めて、どれくらい需要があるんだろう、というところがあります。

今後ファンが増えていき、どこかの企業が「一緒にやろうか」と参加していただいたりすれば、そういうこともあるかもしれませんが。

 

未来感のある透過ディスプレイ、そこから見えるこだわり

— 改めて、“アナログ”感のあるレコードから、未来を感じさせる歌詞のビジュアライゼーションが生まれていく、というのを実際に見ると、とてもインパクトがありますね。それにコンパクトなデザインも素敵です。

星氏:“アナログとデジタル”という点もそうですが、この『透過ディスプレイ』の透けているところ、これがより不思議な未来感を掻き立てているんじゃないかと。技術的に面白いところかな、と思います。

Cotodama frontVisual
『透過ディスプレイ』が実に美しく、奥の店内もはっきり見える。まさに“歌詞が浮遊する”感覚だ。

 

— 確かにそうですね!“歌詞が浮遊している”というのがぴったりきます。

星氏:ここは一号機から引き継いでいるところで、こういうところを大事にしよう、とメンバー全員の認識が合っているので、こういうものとして出来上がっているんだと思っています。

 

Lyric speakerエンジンを軸に広がるブランドの世界

— COTODAMAの歌詞ビジュアライゼーションは、『Lyric speaker』からはじまり、昨今ではLIVE演出などの大きなスケールのものから、今回のレコードプレーヤーと、さまざまな音楽体験にイノベーションをもたらしている点がとても素敵だといつも拝見しています。今後の展開もいつも楽しみだな、と。

星氏:“モノを作る”ということだけではなく、“体験を作る”として力を入れています。“歌詞のある暮らしや体験”として、それぞれの機器が出来上がっていっている。ファーストモデルで生まれたエンジンを、他にも拡げていけるのが理想だと思っています。

我々のこだわりとして「クリエイターが挙げてくるもの、それをエンジニアがどこまで近づけられるか」が一番大事だと。

エンジニアがつい“1pxくらい”と思ってしまう部分も、デザイナーの想い・いいものを作っていくために力を入れていかなきゃいけないところだ、と思っています。

 

— なるほど。そういったこだわりの数々が、歌詞のビジュアライゼーションの美しさ、ひいては魅力的なプロダクト・ブランドにエンジンに繋がっているんですね。

星氏:今回の『COTODAMA レコードプレーヤー』も、こうして展示してみるとまだ改善点や工夫できる点はあると感じています。まだちょっと暗いかな、とか。工夫は必要ですね。

 

— プロトタイプということですが、今後拡がりが生まれることを応援しています!本日はお時間をいただきありがとうございました!

 

 

多くの人の想いによって実現したデモ展示

また今回、星氏へのインタビューと共に、二子玉川 蔦屋家電の方からも展示の背景を伺うことができた。

実は今回の展示、RECORD STORE DAYの数日前に、COTODAMAから二子玉川 蔦屋家電へ相談があったことが実現のきっかけだったという。

「5〜6日前に動画だけが送られてきて。ただそれを見て『これはすごい、どうなっているんですか』と。話を伺うと、RECORD STORE DAYの記念で開発したもので、蔦屋で展示したい、というところから今回のデモ展示になりました。」

短い期間だったものの、RECORD STORE DAY JAPANを運営する東洋化成さんやユニバーサルさんの方々とも合わせて決まった今回の展示。まさに、この『COTODAMA レコードプレーヤー』の開発思想に共鳴した、多くの方の協力があったからこそ実現したのだ、と感じさせるエピソードだ。

 

Cotodama tate

 

『COTODAMA レコードプレーヤー』展示は 4月29日(日) まで、GWのスタートにぜひ!

世界に先駆ける今回の展示。音楽の新しい楽しみ方を提示する、メッセージ性の溢れる展示となっていた。

RECORD STORE DAYという日に、新しく豊かなライフスタイルを提案する『蔦屋家電』で初めて展示される、というコンテクストも実に素敵だ。

展示は4月29日(日) まで行われている。最終の2日はゴールデンウィークの頭2日だ。新しい音楽体験を味わいに、二子玉川 蔦屋家電に足を延ばしてみてはいかがだろうか。

 


Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。