「“音楽・エンターテインメントで企業をデザインする”ブランド戦略」- Modern Age Marketing TOUR 2017 (3)
2017-12-21

2017年12月12日に開催された、国内初のエンターテインメントマーケティングレーベルModern Age/モダンエイジによる「Modern Age Marketing TOUR 2017 “音楽・エンターテインメントで企業をデザインする” ブランド戦略 – JAL、宇多田ヒカルの事例から学ぶ “生き続けるブランディング”の正体 –」レポート、最後となる本記事。

 

このツアーの締めとなる最後のセッションとなった、このBAKERYの総合プロデューサーでもある 株式会社トライバルメディアハウス Modern Age/モダンエイジ レーベルヘッド 高野 修平による「“音楽・エンターテインメントで企業をデザインする”ブランド戦略」をレポートする。

(第1部「“若者カルチャーとの共創”非航空利用時における生活者とのコミュニケーション戦略」のレポートはこちら、第2部「宇多田ヒカル、AIの事例から学ぶ音楽と企業の新たな関係性」のレポートはこちら

 

 

これまでのセッションでの事例を踏まえた上で、「既存の関係性を超えた更なる“音楽/音とブランドの関係”」のために知っておくべき知識について理論的な面からアプローチされた、濃厚な講演。ぜひチェックしていただきたい。

 


更なる音楽/音とブランドの幸福な関係に向けて、理解しておくべきこととは

 

170621 ModernAgeMarketingTour201712 17

 

トップ・オブ・マインドを取る重要性、キーとなる音楽/音の活用

情報や物が溢れ、多様な選択肢が生活者に提示されている現代において、重要となるのは「トップ・オブ・マインドを握ることができるかどうか」という高野。トップ・オブ・マインドとは「あるジャンルのブランドと言えば何を思い浮かべるか?」と聞かれた際に、最初に想起されるブランドになるということだ。

また“想起のされ方”にも2種類あるという。複数のブランドが選択肢として提示されている中で選ばれる「助成想起」と、選択肢が無くとも“そのジャンルといえば” で思い浮かぶ「純粋想起」の2種類だ。この両方で一番に名前が挙がるブランドになれるかどうか、それが今後重要になっていく。

そんな難しいポジションを取りに行くため必要なカギとなるものが、音楽/音だ

セッションでは、脳科学を引用して音楽/音がいかに記憶に残るために効果的か、感情を動かし体験を刻み込むのに有効かが語られた。


(前半のまとめスライド。理論的な内容を交えながら、音楽/音の可能性について触れていった。)

 

タイアップだけでなく、音楽とブランドが長期に“反射し合う”ブランディングとは

では、音楽/音をどのように活用すればよいのか?

新たな音楽とブランドの組み方を考えていくためには、「タイアップ」と「ブランディング」を分けることが必要だと高野は言う。


(「タイアップ」と「ブランディング」との違いを並べたスライド)

 

「タイアップ」と「ブランディング」の違いを並べると、以下のようになる。

  • タイアップ:主に音楽を活用した短期的プロモーション/動的/短期/費用対効果
  • ブランディング:音楽や音を活用して想起を獲得し、ブランディングに活用する/静的/中長期/投資対効果

 

これら2つの特性を正確に理解し、いかに戦略・戦術に落としていけるかがキモとなる。

「人気があるから/いま勢いがあるから」という短期的な視点だけでなく、いかにブランドと音楽のコンテクストを一致させられるかを考えながら、中長期的にお互いを高め合える関係性を構築していくことを高野は「ブランドリフレクション」と表現する。

 

更なる音楽/音とブランドの幸福な関係に向けて

“音楽/音とブランドの掛け算”のために重要な観点として、高野は以下の4点を挙げた。

  • トライブを把握する:デモグラフィックだけでなく、趣味嗜好や興味、価値観で形成されるトライブまで目を向ける
  • 物語の語り方:ターゲットが共感する語り方・メディアを選択する
  • ひとつの型をやり続ける:変えてしまいがちだが、変えずに続けることも考える
  • 共通世界観:アーティストとブランド双方に共通する世界観を見出す

 

今の時代に最適化された音楽/音の活用ができれば、これまでとは異なる可能性と価値を生み出せる。」と語る高野は、改めて音楽とブランドとの関係性(表現方法)について以下のようなバリエーションを挙げている。

  • CMタイアップ
  • フェス、ライブ協賛
  • 社歌
  • 環境音、プロダクトサウンド
  • サブスクリプション
  • クリエイティブプラットフォーム
  • ブランドパートナーシップ
  • デジタルプロモーション

 

そして、「多領域最適化設計」という概念を挙げ、他の領域と混ざりあうことの重要性を説いた。この「多領域最適化設計」というのは、1つの領域において98%の状態から+2%の向上を目指すよりも、他の領域へ進出することで、より大きな効果が得られる、という考え方だ。

これまでの音楽とブランドとの関わり方にとらわれることなく、新たな関わり方を見つけ、広げていく。そうした選択肢の先に、音楽とビジネスのより一層幸福な関係があるのではないだろうか、と筆者は高野の講演を聴きながら感じていた。

 

また、Modern Age/モダンエイジが手がけた案件から、立命館大学×感覚ピエロの「等身大アンバランス」ミュージックビデオを上映し、メッセージと共にセッションが終了した。

 


音楽とブランドのさらなるコラボレーションの可能性が詰まった3時間半

「“音楽・エンターテインメントで企業をデザインする” ブランド戦略」という副題にて行われた本ツアーは、ブランドサイド音楽(エンターテインメント)サイド、そしてそれらを繋ぐ役割という3方向から、立体的に「音楽とブランドの未来」について語られる場となった。

また、ツアーの最後には、高野修平の4作目となる書籍の出版が発表された。タイトルは「なぜ、あのブランドは生き続けることができるのか “音楽・エンターテインメントで企業をデザインする”マーケティング戦略」※。

本ツアーで語られた内容をより深く考察した内容になる予定ということなので、ぜひ楽しみにしていただきたい。
なお、この書籍の最新情報については随時BAKERYから発信していく。

※タイトルは仮です。

 

次回はどのようなテーマで開催されるのか、Modern Age Marketing TOUR第3弾にぜひご期待ください!

 


Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。