【MUTEK.JP 2017特集】“MUTEK”の思想に触れる DIGI LAB パネルディスカッションレポート
カテゴリ:イベント/LIVE
2017-11-06

“MUTEK.JP はただのパーティイベントでは無かった”

11/3(金)〜11/5(日)に日本科学未来館にて開催された、デジタルアート&エレクトロニックミュージック・フェスティバル「MUTEK.JP 2017」。デジタルアートと音楽の文化・可能性を世界中で拡げていくこの重要なイベントをBAKERYでもレポートする。

この記事では、デジタルテクノロジー&音楽に関するシンポジウム、アーティストQ&A、パネルディスカッション、プレゼンテーションが行われた「DIGI LAB」の中でも、MUTEKの意義と展望、そしてMUTEK.JPがいかに重要なイベントなのかを感じられたDAY 1のパネルについてレポートする。

 

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MUTEK.JPオフィシャルより

 

アーティストとオープンなコミュニケーションが図られる「DAY TIME」

MUTEK.JPでは、ライブパフォーマンスが行われるチケット制の「NIGHT TIME」と合わせて、日中は誰でも無料で入場することのできるフリープログラムが設けられている。それが、カンファレンス、ディスカッション、ワークショップといった『コミュニティ・教育』の側面を持つ「DAY TIME」だ。

そこではTouchDesignerや360°VR制作のワークショップなどの教育プログラムの他、今回レポートするパネルディスカッションが開催されていた。

 

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会場は日本科学未来館7F。

 

Day1となる11/3では、計4つのパネルディスカッションが行われた。

 

モントリオールが持つ音楽・アートの土壌、そしてクリエイティビティ

最初のパネル「Creating a new school of thought and creation」では、MUTEKの発祥の地であるカナダ・モントリオールに拠点を置き、NIGHT TIMEにてパフォーマンスも行う アーティスト Myriam Bleau氏、Nicolas Bernier氏が登壇した。

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「Creating a new school of thought and creation」

両氏のトークでまず話されたのは、モントリオールが持つ “テクノロジーと音楽への土壌” だ。
「コミュニティのために存在する大学」や「物理を音楽にいかに落とし込むかという文化」、「インスタンスブロック=コワーキングスペースの多さ」、そしてフランス語・英語双方が使われ小さな街であることによって生まれる「多様なつながり」。このようなローカルの持つ土壌がコラボレーションを促進し、また新たなクリエイティビティに繋がっていく点は実に興味深い。

またこのトークでは両氏のオーディオビジュアルパフォーマンスへ取り組む理由や、コラボレーションに対する意識についてもトークが交わされた。終始明るい雰囲気で進むトークは、スタートにふさわしくMUTEKの雰囲気・文化を感じられるパネルディスカッションであった。

 

Robert Henke氏が語るローカル文化とグローバル文化観

前半の2つのパネルでの共通のワードを上げるとすれば、「ローカル文化とグローバル文化」観ではないだろうか。

続くパネルディスカッション「In Conversation: Robert Henke w/ Jay Kogami」では、その前進となるイベントからMUTEKに参加している MonolakeのRobert Henke氏 が登壇。デジタルミュージックライターであるジェイ・コウガミ氏がインタビュアーとなり、彼が拠点を置く“ベルリンの音楽・アートシーン”から、彼の取り組んでいる進行中のプロジェクトの内容を通じて彼の“クリエイティビティ”に触れる内容となった。

国際的アーティストの口から語られる言葉からは、音楽・アートの発展のためには、いかにローカル・グローバル双方の文化を醸成していくがの重要であることが感じられる。

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「In Conversation: Robert Henke w/ Jay Kogami」

氏は現在在住しているベルリンの変化について言及。
政変によって多くの廃墟を持つことになり、そこからバーやパーティが多く生まれることで、モントリオールと同様音楽への土壌を持ったベルリン。そのベルリンも現在では転入希望も増えたことで地価も上がり状況が変わりつつある。そんな中では、SNSによって音楽・ビジョンをシェアしやすい状況となっている事実は良い面であると同時に、ローカルな文化が減じていくことにつながるという意見を語った。

またトークはエンジニアとアーティストの両方のバッググラウンドを持つ氏の“バランス感”についても展開。そこから現在彼が着手しているCommodoreのCPM5台を接続したオーディオ・ビジュアルのプロジェクトにトークは進む。
完璧さはアーティストとオーディエンスに一種の壁を作る」という彼。OSも無い中で一からプログラムする必要のあるCommodoreを使い、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのかが実に楽しみだ。
(なおRobert Henke氏はこの日のNIGHT STAGEにてMonolakeとして素晴らしいパフォーマンスを行った。これについてはこちらの記事にてぜひご確認を!)

まだまだ止まらず、氏から溢れてくる音楽・アートについての話題に、短い時間であることが惜しい程のトークセッションであった。

 

アーティストによるプロジェクト紹介 〜Woulg & Push 1 stop〜

続いては、こちらもNIGHT TIMEでパフォーマンスするWoulg & Push 1 stopによる「Project Presentation: INTERPOLATE」。
このセッションでは、今年のMUTEK.JP 2017のDOMEシアターにて披露される「Interpolate」についてアーティスト自身から創作過程を聞けるというもの。音と光が相互に影響を与え合いながら変化していくこの作品についてこのプレゼンテーションでは、彼らが実際に開発にて用いたMax/MSP、TouchDesignerの画面と共に聴くことができた。

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「Project Presentation: INTERPOLATE」

 

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オーディオはMax/MSPで開発したシンセサイザー。周波数を造り、それをフィードバックして複雑な音を作り出す。

 

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映像はTouch Designerで構築。連動の自由度も高く可能性は無限大だという。

 

セッション終盤ではオーディエンスからの質問に2人が答える場面も(建築とアートの関係性について、という実に面白いトピック)。そうしたアーティストとオーディエンスの対話が生まれる事こそ、MUTEK そして MUTEK.JP のオープン性なのではと感じる場面であった。

 

モントリオールから世界に拡がっていくMUTEK、〜ローカル文化の発展が重要に〜

DIGI LAB パネルの最後は「Introducing MUTEK」。
本国のMUTEKを立ち上げた MUTEK MontrealのAlain Mongeau氏、Platti Schmidt氏, Vincent Lemieux氏の3名を、MUTEK.JPのLuis Ramirez氏がHOSTとして迎え、MUTEKの思想や展望についてトークが行われた。

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「Introducing MUTEK」

ついパーティを思い浮かべてしまうエレクトロミュージック。それを文化として深め、可能性を拡げていくMUTEKは2000年にスタート。モントリオールで開催されるMUTEKは現在、5日間で80-100の多様なジャンルの作品が展示・披露されるイベント・取り組みとなっている。

様々な国々にて開催され、ここ日本、そして次はドバイで行われているMUTEK。そのグローバルな展開はモントリオールのフェスに参加したアーティストが自国でも開催したい、という意向から実現されたという。

 

そんなMUTEKの彼らが「音楽・アートが発展していくために必要な要素」として挙げたものとして興味深かったのは「フェスが開催される地域で“ローカルな文化”が発展していくこと」。これはRobert Henke氏もパネルで語ったことと共通しているものだと感じる。

MUTEKではルールとして「国際的アーティストが50%、開催国アーティストが50%」というものがあるという。また、MUTEK.JPでも行われているとおり、様々なワークショップが開催されており、よりオーディエンスがクリエイティブを理解し、また自身で作るきっかけを与えるイベントとなっている。
日本では気鋭のアーティストが多くいるものの、それを体験出来る場・コミュニティは少ない。MUTEK.JPのようなイベント・コミュニティが継続して開催されると共に、それを日本からも土壌を作っていく必要がある、そう感じるパネルディスカッションであった。

 

さいごに〜日本の音楽・アートの文化をいかにローカルとして醸成していくか〜

最後のパネルディスカッションにて、2020年にはこのMUTEK.JPもカナダと同じ規模で開催したいという話題が挙がった。
国際的・気鋭のアーティストの作品に生で触れられると共に、その思想を学び対話を生むMUTEK.JP。いまだ日本開催は本国に比べれば小規模ではあるものの、MUTEK.JP 2017は実に“濃い”イベントであった。

今後、日本の音楽・アートをより発展させていくためにも、グローバルとローカルの双方の文化を育て、更に大規模なMUTEK.JPを開催できるような土壌を日本でも育んでいく必要がある。それを強く意識させる貴重なイベントとなった。ぜひMUTEK.JPがより大きなイベント・コミュニティとなるよう、BAKERYとしても情報発信など積極的に行っていこうと考えている。

LIVEパフォーマンスに目が行きがちで、今年はDAY TIMEに参加できなかった方も、来年のMUTEK.JPではぜひ日中からパネルディスカッションに参加してみて欲しい。必ず、音楽・アートの視野を拡げる貴重なきっかけとなるはずだ。

なお、興奮のNIGHT TIMEについてはこちらの記事もぜひご覧を!

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 


2017-11-06 | Posted in イベント/LIVE | by Yuki Abe

Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。