AIとキャラクターの未来を覗く「AI MEET UP『AI×キャラクター・ビジネスの展望』」イベントレポート
2017-10-26

10月23日(月)、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)主催による“AI(人工知能)のキャラクター・ビジネス活用”の未来を描くイベント「AI MEET UP『AI×キャラクター・ビジネスの展望』」が開催されました。

エンターテインメントにおけるAI活用の重要な視点でもある「キャラクター・ビジネスとの掛け合わせ」、その未来を覗く機会となったこのイベントをレポートします。(大ボリュームですが、AI×キャラクター・ビジネスに興味のある方はぜひ最後までご覧ください!)

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(“AI×キャラクター”の持つ可能性や事例、展望が語られたイベントとなった)

 

“八百万の神様” 的意識を持つ日本人だからこその「AI×キャラクター・ビジネス」とは

第一部は、AI開発者である三宅陽一郎氏がご登壇。「なぜAI×キャラクター・ビジネスが日本で重要なのか」「AIが話すとはどういう仕組みなのか」について、コンパクトながらも分かりやすくご説明いただけるパートでした。

「なぜAI×キャラクター・ビジネスが日本で重要なのか」におけるキーワードは「日本人の持つ“八百万の神様” 的意識」。
欧米における知能に対する考え方には「人間の知能が上位、それ以外の知能は下位でありツール」という意識が高く、“人の似姿”を持たせたAIに抵抗感がある。それに対して日本では「あらゆるものに神(魂)は宿りうるもの」という意識が根付いていることから、違和感なく受け入れることができる土壌がある、という点が挙げられます。

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(仏教・道教・儒教・神道が入り混じった日本特有の“知能感”が武器に)

またその他にも、“そもそもAIとは何か”や“そもそも会話とはどのような構造をもっているのか”といったAI・自然言語の基礎的な話から「AIはどのように人と会話しているのか」について話は展開されました。

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(AIが言葉を分析するための形態素解析の例。短い時間の中でAIと自然言語について分かりやすく説明頂けた)

キャラクターにも知能を持たせても違和感のない/持たせたがる日本では、キャラクターの姿をしたエージェントを介在させることでUXをより良いものにしようという『キャラクターエージェント』というアプローチでのAIを受け入れ、育てていける土壌がある、ここにチャンスがある、と三宅氏は語り、第一部のセッションは終了しました。

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(後半のセッションでも重要な概念として登場したキャラクターエージェント指向の概念図)

 

補足)より深く「AIと人との会話」について知りたい方へ
このパートの内容は同氏の著書である『なぜ人工知能は人と会話ができるのか』(マイナビ出版)のコンパクト版とも言える内容でした。AIが人と会話する技術がどのように実現されているか、どのような事例があるかに興味のある方にはぜひオススメの一冊です。

 

AIはどこまで対話できるか 〜AI×キャラクターにおける自由対話の重要性と難しさ〜

続いて、AI×キャラクター・ビジネスのキーパーソン3名も登壇してのトークへ進み、「AIはは現在どこまでの対話が可能なのか」「“自由対話”の重要性とその難しさ」についてトークが展開しました。

<登壇者>

  • 三宅陽一郎 氏(AI開発者)
    デジタルゲームにおける人工知能の開発・研究に従事し、さまざまな著書を出版。
  • 結束雅雪 氏(株式会社 言語理解研究所(ILU)代表、株式会社Intelligent Machines Amaze You(IMAY)代表、博士(工学))
    AI エンジン『K-laei』を開発し、対話型AIサービス『PROJECT Samantha』をSMEと共同運営。
  • 井上敦史 氏(ソニー・ミュージックエンタテインメント コーポレートビジネスマーケティンググループ)
    対話型AIサービス『PROJECT Samantha』開発、運営。『AI罵倒少女』にて「第1回 アニものづくりアワード」オリジナルコンテンツ部門・金賞受賞。
  • 松平恒幸 氏(ソニー・ミュージックコミュニケーションズ マーケティング戦略本部戦略オフィス兼SMEデジタルコンテンツグループVRチーム)

 

AIにおける対話の世界的トレンドでもある「自由対話」。これは文章に含まれていない“意図”を汲み取り応答するというものです。この「自由対話」を実現するためには、多くの技術を組み合わせ実現する必要があります。

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(自由対話の分かりやすい例。ただ文章に含まれるキーワードに反応するのではなく、その文章の“意図”を理解して返すことが、AI×キャラクターで重要となってくる。)

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(自由文理解と制御のために必要とされた、多くの技術とノウハウ。)

そこでその技術を導入するためのサービスとして、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)とIMAYとで共同運営されている、キャラクター対話に特化した対話AI『PROJECT Samantha』が紹介されました。

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(キャラクター対話に特化した対話AI『PROJECT Samantha』。既に利用可能なサービスとしてスタートしている。)

 

『PROJECT Samantha』は元となるマンガ・アニメ・映画のキャラクターを感情値や性格設定シートを元にAIへ移植し、キャラクターの人格に沿った対話を実現させることができるサービス。

このセッションでは、この対話AI『PROJECT Samantha』で実現された「罵倒少女:素子」のデモンストレーションも行われました。

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(「罵倒少女:素子」は、人の心を揺さぶる対話(主に罵倒)で話題となり「第1回 アニものづくりアワード」オリジナルコンテンツ部門・金賞を受賞したサービス)

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(入力した言葉に罵倒で返しながらも時に照れるなど、キャラクターらしさを感じさせるキャラクター・エージェント)

井上氏が話した内容をリアルタイムで打ち込むと、その言葉に豊かな反応を示して会場を沸かせました。公開時には最大15時間以上も会話し続けたファンもいたということですが、通常の無機質なエージェントではない「キャラクターらしさ」を感じさせる反応に、その理由を伺うことができるデモンストレーションでした。

 

AI×キャラクタ・ビジネスの事例と「キャラクタと話したい」という欲求

前述の「罵倒少女:素子」以外にも、AI×キャラクタ・ビジネスの事例として、井上氏からは「劇場版 魔法科高校の劣等生でキャラクターが映画をプロモーションするグループチャットAIサービス」が、松平氏からは「めざましマネージャー アスナ」や「一択彼女 加藤恵」、「ニュースマネージャー沢村碧」が紹介されました。

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(劇中キャラクターがプロモーションするという世界初の事例(プレスリリースリンク)。スマホ以外にWebにも組み込まれプロモ展開された。)

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(先日のソニースクエア渋谷プロジェクトでの記事でも紹介した沢村碧。デモンストレーションも行われ、高い合成音声の技術は実に自然。すでに様々な場所でニュースを読み上げるアナウンサーとして採用されている。)

 

そんな事例の中で、「罵倒少女:素子」や「めざましマネージャー アスナ」でも共通したこととして、「ユーザーはキャラクターAIに愛を囁く」という点が取り上げられました。

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(AIにユーザーが入力した上位の多くには、愛情を伝える言葉が多く並ぶ)

ユーザーが愛情を示すほどのキャラクターAIを実現するためには、やはり自由対話の仕組みに加え、泥臭く人力でのチューンナップが重要だと井上氏は語ります。(「罵倒少女:素子」の場合は、原作者のmebaeさんと共に「素子であればどう返すか」を落とし込み、最終的には原作者にも認めてもらえたとのこと。)

 

そうして作られたキャラクターに対してユーザーは「話したい」という欲求を持つ、それが製品に落とし込まれた例として、「ソニーモバイル Xperia Ear キャラクターコラボモデル」の事例が紹介されています。

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(対話エージェントをキャラクターに置き換えたことで、製品が圧倒的に売れる結果に結びついた)

 

またこの「キャラクターAIと話したい」という欲求は世界にも拡がっていくといい、その一つのモデルとして映画『her/世界でひとつの彼女』が紹介されました。


(まさに「キャラクター・エージェント」のひとつの未来を描いた作品。未見の方はぜひ。)

 

AI×キャラクター・ビジネスの展望とは

最後にAI×キャラクター・ビジネスの展望が4名それぞれから語られました。

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(これらの他にも、話題になることの多い「スマートホーム」へのキャラクター×AIの組み込みなども挙がった。)

 

「キャラクターが伝えるからこそ伝わること」、「キャラクターと話せることの価値」などが重要な視点としてアイディアが紹介されました。

これらの普及のために重要なこととして、「AI化権の整備」・「人間が使っていても飽きないようにするプロデュース能力」・「学習データの整備」が挙げられ、Q&Aと共にこのイベントは幕を閉じました。

 

エンターテインメントにおけるAI活用の一つの形として

「自由対話」と「合成音声」によって対話が可能となるキャラクター。これが様々な製品や場面に組み込まれることによって、いかに人の心を揺らし/動かしうるのかを事例や経験を交えて強く感じられるイベントでした。

ただ実現には「難しい技術の組み合わせ」と「キャラクターに対するプロデュース力」の掛け合わせが必要となる。そのためにはよりテクノロジー側とエンターテインメント側が近づく もしくは つなげる存在が介在することが重要だと感じています。

そのひとつの形である「PROJECT Samantha」から、またどのようなエージェントが登場するか、またその他にもどんなサービスが登場するか、テクノロジー側とエンターテインメント側双方からBAKERYではアンテナを張っていきたいと思います。

 

    リンク:

  • AI MEETUP -Powerd by ソニー・ミュージックエンタテインメント- Peatixイベントページ
    http://peatix.com/event/311254

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 


2017-10-26 | Posted in AI, イベント/LIVE, エンターテック | by Yuki Abe
Yuki Abe

Yuki Abe

マーケティングコミュニティプラットフォーム「cocosqure」の開発 及び 音楽・エンターテイメント音楽とテクノロジーを掛け合わせたプロダクト/サービスの情報発信および開発を行っている“エンターテック・テクノロジスト/ソフトウェアエンジニア”。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。