人の心を動かし、また時として本人にとっての思い出を保存するような役割も果たす音楽。より深く届くコンテンツを作ろうと、そんな“音楽”を通じてリスナーのことをより深く知るための様々な取り組みが行われています。
そんな中で、もっとも音楽ストリーミングサービスの雄として成長を続けるSpotifyは、音楽を通じてリスナーをどう捉えているのか。それを知ることができるサービス「Spotify.me」についてレポートします。
Spotify.meとは
Spotify.meは、Spotifyのマーケティングサービス「Spotify for Brands」の一環として提供されている、同社がストリーミングの傾向を通じてどのようにユーザーインサイトを得ているのか、簡易分析を体験するためのサービスです。
Spotifyユーザーであれば、自身のアカウントをSpotify.meに連携することで、誰でも試すことができます。
Spotify.meのTopページ、利用にはSpotifyのアカウント連携が必要となる。
音楽からリスナーをどのように理解しているか
ではSpotifyは音楽を通じてどのような情報を読み取っているのか、Spotify.meから見ていきましょう。
Spotify.meでは「Spotify全履歴」と「最近の履歴」のどちらかから選択して分析結果を見ることできます。
・お気に入り楽曲
まず最初に表示されるのは「お気に入りの楽曲」。よく聴いている楽曲がシンプルに表示される。
最近ヘビーローテーションしているtofubeatsが表示され、納得。
・視聴時間帯
次に表示されるのは「視聴時間帯」。時間帯ごとの再生時間を見ることで、リスナーの生活のバイオリズムを見ることができる。
筆者は通勤時間帯や、パワーが欲しいタイミングでよくSpotifyを利用しており、それが現れた結果に。
・視聴動向(エナジー、テンポ、感情、ジャンル)
視聴動向としては、「エナジー」と「テンポ」、「感情」について見ることができる。それぞれの定義も書かれており、Spotifyのナレッジを垣間見ることができ興味深い。
例えば、エナジーについては以下のように記載されている。
エナジーはダイナミックレンジ、ラウドネス、音色、オンセットレート、およびトラックの一般的なエントロピーに基づいています
エナジー系楽曲とそうでない楽曲の比率が表示されていると思われる
ストリーミングした楽曲のBPMの平均も表示される
感情として筆者は「ポジティブ」と表示された
また“どのようなジャンル”を視聴しているかを、その比率とキーワードで見ることができる。
・その人らしさを表すキーワードとプレイリスト
これまでは定量的な分析が多かったが、最後には「その人らしさを表すキーワード」的な定性的な表現も見ることができる。どのようなバリエーションがあるかは分からないが、トータルの情報から導き出された“その人を表す言葉”は、リスナーを素早く感覚的に把握するために実に面白いものだと感じる。
感情として筆者は「ポジティブ」と表示された
また分析の結果からプレイリストを作ることもできる。
音楽を通じて、どこまで人の内面を理解できるか
IoTやウェアラブルデバイスなどを通じて、多くの情報から“人を理解する”ことを試みるスタートアップが様々登場してきている昨今。音楽を通じて人を捉えようとする音楽スタートアップも数多く登場してきています。
新しい技術や洞察により“どのような音楽を聴いているか”からエモーション情報や行動傾向を読み取り、新しい出会いを演出できるようなサービスが生んでいく。そんな新しい音楽体験の創造プロセスの一旦を感じられます。
視聴履歴データを保持しているかどうかで、Spotifyのようには分析できないかもしれませんが、どのような理解ができるのかを考えるきっかけとして、音楽スタートアップを考えている方やアーティストの方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。
BAKERYとしても、“リスナー・体験者をいかに理解するか”の分野においてもウォッチとトライを行っていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。