【SXSW2017レポート】革新的なビジネスアイディアが集う Music Startup Spotlight レポート
2017-04-03

SXSW2017のレポート第2弾は「Music Startup Spotlight」から、会場の雰囲気とBAKERYが注目するビジネス・アイディアをご紹介。

「SXSW Startup Spotlight」は、各業界の最も革新的なスタートアップ企業が集まり、来場者へのプレゼンテーション、来場者とのディスカッションを行うイベント。
2017年は“Tech”、“Music”、“Foot+Tech”の3カテゴリで開催されている。
(このうち“Tech”には、BAKERYがコラボレーションしたXTREME DESIGN Inc.様も出展していた。)

 

音楽ビジネス特化の「Music Startup Spotlight」では、スタートアップ企業 20社が出展。
BAKERYではそれらを
「新しい音楽体験を提供しようとするプロダクト」
「新しい音楽を生み出すアーティストを支援する新しいサービス」
「音楽を取り巻くエコノミーを模索するアイディア」
の3つの観点でチェックした。

新しいビジネスアイディアを覗いてみよう。

 

IMG 0914
会場はオープン。来場にはPlatinum, Interactive, Film, Musicいずれかのバッジが必要なはずだが、ノーチェックで誰でも来場できそうなほど。

 

Music Startup Spotlightはオープンながらも、チャンスを狙うピリッとした空気が漂う場

Music Startup Spotlightは3/14(火) Hilton Austin Downtown 4Fのプリファンクションエリアで行われた。

大きく採られた窓から初夏を感じさせる日差しが差し込む中、各企業が丸テーブルとバナーを出し、来場者を待つ。

各企業ごとに与えられるスペースは思っていた以上にコンパクト。
そのため自然と“出展者と来場者のコミュニケーション”に重きを置かれた雰囲気となっていく。

 

実際に各ブースに赴き話を聞くと、積極的に自身のサービスを説明しつつ「このサービスについてどう思う?」と自身のサービスへのフィードバックを積極的に求めている企業が実に多い。
(中には明らかに出資者となるベンチャーキャピタルや投資家を探している企業もあったが)

 

CULTIVATE
各企業のスペースは狭く、丸テーブルとバナーのみ。その分来場者と近い距離で意見が交わされる。
WEBサービスとして、アーティスト向けのデジタルマーケティングコンサルを提供する「CULTIVATE」。

 

Nymbus
会場ではドリンクフリー。ワインを片手に楽しみながら回る来場者も。
イベントの演出と情報取得を兼ねたデバイスとサービスを提供する「nymbus」。

 

また、来場者もドリンクを片手に、新しいビジネスに触れようと実に楽しそうに回っているのが印象深い。

そんなオープンかつラフにも感じる空間だが、さすが音楽とテックの祭典であるSXSWの音楽ビジネスイベント。
出展者・来場者共に楽しみながらも、瞬間瞬間に真剣な意見が交わされ、ピリッとした空気も漂うイベントとなっていた。

 

Even
最も来場者を集めていたのは、新たなリスニング体験を提供するヘッドフォン「even」。
実際に実機を体験できるのはやはり強い。

 

そんな「Music Startup Spotlight」に出展した企業の中から、注目の企業・サービスをご紹介していこう。

 

1) アーティストを支援する新しいサービスたち

今回のSpotlightの出展内容としてまず着目したのは“アーティストを支援する新サービス”たち。

新しいテクノロジーの力に『より広く・より安価、そしてより高品質なサービスを提供できるようになる』ことがある。その力が アーティスト・制作サイドに向かい始めている、そんな流れを感じさせる。
少々数が多いが、どれも刺激をくれるアイディアだ。チェックしていこう。

 

まずご紹介したいのは「Cultivate」、ソーシャルメディア時代のアーティストに向けた、マーケティングエージェンシーサービスだ。
Cultivate
Cultivate : http://www.cultivate.social/

 

ソーシャルメディアの普及により、アーティスト自身で音楽・パフォーマンスを売り出すことができるようになった。そんな中で新たにアーティストに求められるようになった“マーケティング力”を補うサービスがCultivateだ。

個々のアーティストに最適化されたツールやマーケティング計画をレコメンデーションしてくれるこのCultivateは現在先行受付中とのこと。

より音楽が世に広がりやすくなる、そんなサービスを提供してくれるか注目だ。

 

次に、マーケティングの観点で注目なのが「Nymbus」。

NymbusはスマートLEDリストバンドとアプリを使い、LIVEの力・ファンの力を最大化するサービスだ。

Nymbus
Nymbus : http://www.nymbusmedia.com/

 

ソニーミュージックのFreFlow®(フリフラ)のようなスマートLEDバンドと、それをアクティベートするためのアプリを組み合わせ、
デバイス・アプリから取得するデータでコンサートを“スマート化”する、というのがNymbusのアイディアだ。

LIVEの魅力を増しファンの拡散力を活かすことで、売上やツアーの価値を増していく。

“スマートデバイスによる目新しさ”は落ち着きを見せはじめているが、今後はそんなデバイスとアプリやWEBサービスを繋げ、いかに価値を生み出していけるか が音楽ビジネスのポイントになっていきそうだ。

 

また、実務面で魅力的なのが「Jammber」。
このJammberはエンターテインメント業界に特化した、ロイヤリティ分配や書類作成、支払と言った各種マネジメント業務をサポートしてくれるサービスだ。

Jammber
Jammber : http://www.jammber.com/

制作活動を続けていく上で避けては通れない各種マネジメント業務の負担を最小限にしてくれるこういったサービスにより、アーティストが制作に集中できるようになる、そういったテクノロジーの使われ方も素敵だ。

 

 

さらに昨今、複数人の制作者で協業し、それぞれで補い合ってユニットとしてオールラウンドに活躍する“コ・クリエーション”が注目を集めているが、そういったコラボレーション活動をサポートするサービスも登場してきている。「SkyTracks」だ。

 

SkyTracks
SkyTracks : https://skytracks.io/

 

SkyTracksは音楽制作の クリエーション・シェア・コラボレーションを総合的に支援するWEBサービスだ。

主要な各種DAWと連携し、共に制作しながらLANDRなどとも連携しミックス・マスタリングまでを行っていく。

現状でも様々なサービスがある中で、どこまで尖った機能が提供されるか注目していきたい。

 

 

またそうして制作されたコンテンツを届けるプラットフォームとして「OneAvenue」が出展している。
ファンに、アーティストのソーシャル、ミュージック、ビデオ、ライブストリーミング、チケットの360°ビューをワンストップで提供するプラットフォームだ。

OneAvenue
OneAvenue : http://www.oneavenue.tv/

 

ただこういったコミュニケーションプラットフォームは、既存の・既に多くの生活者が存在するソーシャルメディアや音楽配信サービスとといかに差別化できるのかが重要になるだろう。

 

 

2) 新しい音楽体験を提供しようとするプロダクト・サービス

前述までが “音楽を作り届ける側”だとすれば、次に紹介していくプロダクト・サービスは“生活者の音楽体験をリメイク”するプロダクト・サービスだろう。

やはり「OnlyInVRRIFF.TVRなどVR関連の出展もあったが、その他にも注目したいものがあった。

 

会場で最も来場者を集めいていた「even」はヘッドフォン・イヤフォンのスタートアップだ。
独自のEarPrint技術を用い、装着した人ごとに最適化するヘッドフォンを開発している。

Even
even : https://www.weareeven.com/

近年では、OSSIC や VIE SHAIR など、スタートアップ企業によるヘッドフォンの開発が目立つのも一つの潮流だろう。

大企業では安定した売り上げが求められ、アイディアが出ても実用化されないモデルや技術を、スタートアップが実現していく、といった動きが見られる。

これまでの聴取体験を刷新するような斬新なデバイスが出てくるのを、期待せざるをえない。

 

また、生活者に新しい音楽イベントの楽しみ方を与えてくれそうなのが「RoadNation」。
RoadNationはいわば、ファンが “ブッキングマネージャ” になれるサービスだ。

RoadNation
RoadNation : https://www.roadnation.com/

アーティストが活動圏を事前に登録しておき、ファンがアーティストへツアー・イベントを“ブッキング”するような体験ができる。

『自身の愛着のある地元に、好きなアーティストを呼び寄せ、それをシェアさせる。』
そんな体験を通じて、よりファンの愛着度を増させ、またアーティストは集客を安定して行えるというサービスだ。

これまで資本やノウハウが必要だった作業を、WEBを通じ分散・自動化することで、広く体験できるようになる。

こういったテクノロジーの使い方も実に面白い。

 

また、パーティ・イベント関連での“体験の拡張”として、「Requestify」と「Soundmob」を紹介したい。

Requestifyは、イベントで参加者が “DJ” になり、楽曲をリクエストできるようにするサービス。

Requestify
Requestify : https://www.requestify.com/

 

アプリを使い、イベントが行われているロケーションに入った来場者が、イベントでかかる楽曲をリクエストできる仕組みを提供する。
ただ主催されたイベントに参加するのではなく、イベントを“全体で作り出していく”という一体感を与えてくれそうで、うまい活用法が出てきそうなサービスだ。

また、soundmobは来場者のスマホやスピーカーをWi-FiやBluetooth、クラウド経由で連動・同期させることによって、よりインタラクティブ性のある音楽体験の提供を試みるサービスだ。

 

Soundmob
soundmob : https://www.soundmob.org/

もはや誰もが身につけ、また一番身近な“音楽のスピーカー”となっているスマートフォン。
これを連動させることで新しいイベントが生まれるかもしれない。

 

また、『音楽の発見』として最近では音楽配信サービスプラットフォームにおけるプレ入りスターの力が注目されているが、Startup Spotlightでも“人の力による音楽のレコメンド力”に注目したサービスが登場してきている。

 

SoulSence」は“楽曲への想いや表現”をシェアすることに特化したソーシャルプラットフォーム。
一つ一つの楽曲に、その想いを載せることができるこのサービスは、楽曲へ“人とのつながり・紹介による付加価値”を載せる。

どれほどの効果が出るか、どんな新しい表現が生まれるかに注目したい。

SoulSence
SoulSence : http://soulsence.me/

 

また、“人力”を前面に押し出した「musx」というレコメンデーションサービスも出展していた。(ただ現時点では情報が少ないため、今後の情報を待ちたい)

Musx
musx : http://musx.com/

 

 

3) 音楽を取り巻くエコノミーの可能性を模索するサービス

また今回のMusic Startup Spotlightでは “エコノミー” にも注目したい。
音楽業界における新しい経済の可能性を模索する企業が登場してきている。

 

まずは「Everywhere Roadie」、シェアリングエコノミーから生まれた“機材や人材のシェアサービス”だ。

Everywhere Roadie
Everywhere Roadie : https://www.everywhereroadie.com/

望んだ表現のために、時として特定の機材を使わなければならない場面があるため、アーティストやスタジオなどでは高額の機材を保持しているが、それらが常に“稼働している”かと言われれば、Noだろう。

そんな未稼働な機材をシェアすることで、収入を生み出すと共に、機材の利用される場面を増やす、そんなサービスだ。

現在はアメリカをはじめ6ヵ国でサービス提供を始めている。

 

また、「PERDIEM」は自身で“レーベル”を立て、音楽に投資できるプラットフォームだ。

PerDiem
PerDiem : https://www.investperdiem.com

CDを“お布施”と捉え、またクラウドファウンディングで“投資”という形で資金を集める、といったニュースが増えた昨今だが、
このPERDIEMでは各々がレーベルという形で音楽を発見しそこへ投資する。そしてアーティストの成功に応じて収益もあげられるというものだ。

 

権利関係では「National Performing Rights Exchange (NPREX)」が“オンラインでの演奏権の直接ライセンス取引”を提供する、というビジネスを立ち上げている。

National Performing Rights Exchange
National Performing Rights Exchange : http://www.nprex.com/

権利関連ではこれ以外にも「TuneRegistry」や「Songtradr」などが出展していた。

 

こういった音楽 及び その周辺で新しい経済を生み出していく、そんな視点も今後の音楽ビジネスとして念頭に置いていきたいものだ。

 

 

SXSWだからこそ見える新たな音楽ビジネスの可能性

「新しい音楽体験を提供しようとするプロダクト」「新しい音楽を生み出すアーティストを支援する新しいサービス」「音楽を取り巻くエコノミーを模索するアイディア」の3つの視点でチェックしてきたが、いかがであったろうか。

2年〜3年は先をいくと言われるアメリカ。その中でも常に音楽ビジネスの先を考えイベントに反映してきたSXSWで行われたこのイベントだからこそ、
そのビジネスアイディアや全体の傾向は掴んだ上で、2017年を見ていきたいものだ。

また今回のイベントでは日本企業は無かった。
やはり日本人としては、日本初音楽スタートアップにも期待していきたい。またその一助としてBAKERYもなっていきたい、と感じられたイベントとなった。

次はどんなビジネスが生まれるか/生み出すことができるか、ワクワクしながら音楽に触れていこう。

 

ソース:

 

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


2017-04-03 | Posted in イベント/LIVE, エンターテック | by Yuki Abe

Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。