「現実とバーチャル」という感覚を取り払うプロダクト・作品 5選
2016-04-04

VR(バーチャルリアリティ)元年とも言われる2016年。デジタルでつくられた仮想現実による表現が注目を集めていますね。

普及が進むにつれて、より “現実的なVR表現”が進んでいくと思われますが、そんな中あえてBAKERYではその逆、“VR的な現実表現”にも注目したいと考えています。
これまでフラットな画面の中で表現されていたような “バーチャルな表現” が現実世界に迫り出してくる。
それはCG(コンピュータグラフィック)などに慣れきった人々にこそ、大きなインパクトを与えるのかもしれません。

当記事では、そんな「現実とバーチャルを区別する感覚」を破壊してくれるような、“VR的な現実表現”とも言える刺激的な作品・プロダクトをご紹介します。

・Social Soul

Delta Social Soul – TED 2014 from MKG on Vimeo.

日々、世界中の人々の感情や記憶が大きなストリームとなって流れている“ソーシャルネットワーク”。その中に飛び込んだらどのような感覚になるのか、それを現実のものとしたのが「Social Soul」です。

入場者は入室前に自身のスマートフォンからTwitterアカウントを登録、そして大量のモニターと鏡で構成された室内に足を踏み入れます。
すると自身のTwitterの情報から独自のアルゴリズムで算出された「Soul Mate(ソウルメイト)」のソーシャルストリームが部屋中にビジュアライズされ、またサウンドもリアルタイムにジェネレートされます。

ソーシャルストリームを体感した最後には、その運命的な相手のTwitterアカウントが表示。実際にオフラインで出会うことを促す仕組みになっています。

日々ディスプレイ越しに覗いているソーシャルネットワークの大きな流れを現実に持ち出すという考え、またSF映画のワンシーンのような一室はまさに“VR的な現実表現”と言えるのかもしれません。

・Interactive Doors between Virtuality and Reality

DOORS, between reality and virtuality from THÉORIZ on Vimeo.

「Interactive Doors between Virtuality and Reality」はその名の通り、“現実とバーチャル”という概念に取り付けられたドア。

何気ない生活の中で利用している、“現実の空間と空間”をつなげるドア。その概念を打ち壊すこのドアの先にはバーチャルが広がっています。
「ただディスプレイがはまっているだけなのでは?」と思われるかもしれませんが、このドアにはセンサーが組み込まれており、視聴者の視線や位置に応じて“より現実的に”映像と音響を変化させることで、その先に広がるのが現実なのかバーチャルなのか、錯覚させようとしています。
 
センサーといえば昨今は“IoT”(インターネット オブ シングス、モノのインターネット)が浮かびますが、それらはただ「たくさんの数字が取れる」というだけでなく、こうした現実とバーチャルの境目をなくすことにこそ、新たな可能性を秘めているのではないでしょうか。

・The Future Was Then

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via fubiz

こちらは前述の2作とは異なり、より物理的な表現。まるでカートゥーン・アニメーションやゲームの世界のように、美術館の壁がぶち抜かれているこの作品。
この壁を抜ける穴は向こうに進むにつれ人型になっていく、つまり人の進化を表現しています。
約91メートルにもわたって突き抜けていくこの穴のほか、壁を伝う“波紋”や“壁に嵌った人”など、まさにバーチャルで見た光景が現実に展開されています。

実際には潤沢な予算やスペースが求められますが、“VR的な現実表現”を感じられる作品です。

・Digital Combinations Between Bold Colour-Blocking and Landscapes

Digitalcreationscolorblocking 0 900x900
via fubiz
自然の中にある不自然。画面の中央に配置されたビビッドなカラーで構成された“デジタルなオブジェクト”。
これは後で合成されたものではなく、実際の建造物としてその場に配置されているものです。
 
デジタルなオブジェクトはディスプレイの中ではもはや見慣れたものです。
ただそれが現実に物体として配置されることで、その違和感やインパクトはこれだけ大きなものになるのだ、と思わせてくれます。

・Vantablack

The blackest material on Earth

This is the blackest material on Earth.

INSIDERさんの投稿 2016年3月9日

前述の4作とは異なり、最後の一つは素材です。
この「Ventablack」は“世界で最も黒い物質”であり、光をほとんど反射せず吸収してしまう性質を持ちます。

そのため、このVentablackが塗られているものは、肉眼でもまるで“黒で塗りつぶされた画像”のような錯覚さえ感じさせます。

この素材自体は一般にはなかなか手に入らないものではありますが、こうした最新の素材を利用することで、猛烈な違和感・インパクトを与える表現も可能である、という意識を持つことは、作品制作に大きな刺激になるのではないでしょうか。

いかがだったでしょうか。
BAKERYではこれからも、こういった制作の刺激となるような作品をキャッチし発信していきたいと思います。
 
 
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
 


Yuki Abe

音楽・エンターテインメントとテクノロジーに焦点を当て 「音楽・エンターテインメントが持つ魅力・パワーを高め、伝える体験(演出や技術、それらを活用したマーケティング施策など)」、 「アーティストやクリエイター、音楽業界がよりエンパワーメントされるような仕組み(エコシステムや新しいビジネスの在り方)」 を発信・創造していくことに取り組んでいるクリエイティブ・テクノロジスト/ライター。 「SXSW2017 Trade Show」出展コンテンツ制作やレポート発信をきっかけに、イベント・メディアへ登壇・出演。その他、LIVE演出やVJの技術開発にも取り組んでいる。